法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『スター☆トゥインクルプリキュア』第49話 宇宙に描こう!ワタシだけのイマジネーション☆

日本初の有人ロケットがうちあげられる日、かつてロケットを置いていた湖畔に集まっていた星奈たちは、フワやララと再会する。そして怪人ノットレイの強化版が生まれる事故に、プリキュアとして対処を終えたが、それは……


村山功シリーズ構成の脚本に、宮元宏彰シリーズディレクターの共同コンテ*1。高橋晃作画監督で、成長したキャラクターの新たな姿も見せていく。
前半はあまり活躍できなかったメインキャラクターの父親を、ギャグタッチで描写。後半は前半との微妙な違いを比べるだけで、夢想に対応する現実を示すというミステリの謎解きに近い楽しさがある。約三十歳に成長した星奈たちの未来図が、すべて宇宙での再会へ収束する流れも美しい。大人になった星奈と羽衣がたがいの子供時代の髪型をしているのも、なかなか関係の重さを感じさせて良かった。

何より、恒例となった次作のプリキュアとの共演イベントと最終回らしい後日談ドラマを、リフレインする構成で両立したことに面白味がある。いかにも子供向けアニメのイベントらしく簡単に再会する前半と、大人になるまで時間をかけて再会を目指す後半。いつものプリキュアらしい描写と共演をエンタメとして処理しつつ、その幼いころの夢想を大人になって自らの力でたどりつくドラマもじっくり楽しめた。
ちなみに今年春の共演映画『映画プリキュアラクルリープ みんなとの不思議な1日』もタイムループ設定を使っているという。前半と後半のリフレインは次作『ヒーリングっど♥プリキュア』の設定がかかわっているのかもしれない。


最終回なので、全体の感想も書いておく。
おおむね良い意味で、過去最高に安定した作品だったと思う。全49話の半分以上となる26話分もの脚本をシリーズ構成がひとりで担当したのは、シリーズでは今作が初めてだ。連続脚本率の高さで印象深かった『Go!プリンセスプリキュア』で数えたことがあったが、実際は全50話で16話分だけだった。
プリキュア作品におけるシリーズ構成の脚本率 - 法華狼の日記
さらに異なる脚本家が担当しても、前回の結末を受けて物語がはじまる話数が多く、連続ストーリーらしさを強調していたのも特色だった。イベント的な最終回ですら、中盤に出ただけのゲストキャラクター「リンリン」を再登場させたほどだ。
ただし、かわりに突出したエピソードがほとんどなく、アクション作画も芳山優参加回くらいしか目を引かなかった。各プリキュアにも敵幹部にもまんべんなくエピソードがわりふられ、それぞれの課題もほとんど決着するぐらい偏りをさけたが、それゆえ1年間かけた物語のうねりやメリハリに欠けていた感はある。
娯楽として魅力があったのは個性的な異星人の設定。ファンタジックな外見のようでいて、ちょっとした理科的知識を反映したSF設定で、異なる生態の異なる社会をバラエティ豊かに展開した。『アニメージュ』の特集によると、異星と異星人の設定をふくめたデザインは、コンセプトアーティストとして起用された升井秀光の仕事だという。

そうした異星人の姿をとおして、ここ数年かかげてきた多様性というテーマを、ビジュアルとして魅力的かつ説得的に作品化した。プリキュア側も、初めて人間に日本人とメキシコ人のダブルを配置。金髪に褐色肌のキャラクターとして、きちんと現代にむきあった存在感があった。

しかしあえて難をいえば、世界に多様な他者がいると示した段階にとどまり、そこからどのように向きあうかまでは描けていなかったとも感じる。通訳という天宮の進路選択もふくめて、難しさを知ってなお対話することの大切さは描いているものの、敵対する存在とは過去作*2と同じく敬して距離をとることが限界だった。
そもそも天宮が敵幹部に接したエピソードで描かれたように、プリキュアという強者が手をさしのべることは、相手を見くだしていることと表裏一体だ。ていねいにテーマを深めたことで、そうしたシリーズの枠組みそのものの限界に直面しつつ、その克服まではできなかった。
『スター☆トゥインクルプリキュア』第43話 笑顔への想い☆テンジョウ VS えれな! - 法華狼の日記
しかし逆にいえば、今作でシリーズの課題もうきぼりになったことで、それを超える新たな可能性も生まれた。次作以降でどのような回答が出るかに期待したい。

*1:他に座古明史と、演出処理も担当している川崎弘二がクレジット。

*2:代表的なのが『Go!プリンセスプリキュア』の最終回。 『Go!プリンセスプリキュア』第50話 はるかなる夢へ!Go!プリンセスプリキュア! - 法華狼の日記