法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『スター☆トゥインクルプリキュア』第43話 笑顔への想い☆テンジョウ VS えれな!

ノットレイダーのワープの痕跡をたどるため、プリキュアは解析技術のあるグーテン星に向かった。
高い技術力をもち、鼻の高さで人の価値が判断されるその星こそ、敵幹部テンジョウの故郷だった……


稲上晃ひさびさの単独作監。原画に青山充がいたりして、全体的に絵柄が古臭い感じがあった。結末の家族の風景など、芝居は全体的に念入りで良かったが。
脚本は村山功シリーズ構成が連続して担当。あらためて天宮えれなの日本社会における異端ぶりを、テンジョウの過去と重ねるかたちで描いていく。
前回*1に印象深かった天宮の作り笑顔や、天宮母の本心を回想し、物語の連続性を強調。美醜で差別された苦しみを、すでに過去として乗りこえたはずの天宮につきつける。
今作のフォーマットでしか描けない物語でありつつ、今作のフォーマットの限界を誠実に描いた物語でもあった。


まず、地球人からすると極端に鼻が高いほど美しいとされる異文化ぶりで、ルッキズムの滑稽さがよくわかる。テンジョウにしても鼻の穴が見える高い鼻のデザインで、ちょうどアニメキャラクターとして美女の記号くらいなのに、外見に劣等感を持っている。
それでいて、そのルッキズムを誰も茶化さないことに感心した。美醜は文化に左右されるし相対的だが、異文化を外部から否定するだけでは終わらないし、評価に傷つく思いを安易に笑い飛ばすこともできない。
グーテン星人が進んだ文明人らしく、外見が劣っているとされる者にやさしく手をさしのべ、けして表では嘲笑したり罵倒しないのも良かった。哀れみは見くだしであるという問題意識は、あまりシリーズでは描かれてこなかった。やさしさを見くだしと批判するなら、敵を救おうとするプリキュアも少なからず対象となるからだろう。
事実として、プリキュアとして戦いに決着をつけた天宮が手をさしのべても、テンジョウは受けいれられなかった。プリキュアとしての戦いをへても今回の問題は解決しない。


そしてひとり帰宅した天宮を家族がむかえる。
作品のフォーマットを壊すほど家族の風景を長く描きながら、異なる世界をむすびつける母のような仕事をしたいと天宮はうったえる。第34話*2の異星人交流で天宮が活躍したエピソードが、ここでつながってきた。
その天宮の思いを家族が受け止めつつ、少しずつ温度差があるのも良かった。家族であっても簡単にわかりあえないし、だからこそ理解しようとする努力が尊いのだ。