1994年に発売されたオリジナルビデオアニメーション。雨宮慶太監督の低予算オリジナル特撮映画『ゼイラム』の前日譚としてつくられたSFアニメで、各30分で全6話。
1990年代後半の時点で視聴したことがあるが、全話をひとつのパッケージにまとめたDVDで二十数年ぶりに視聴した。
ライナーノートのインタビューによると、『ゼイラム』の高評価をえて、作品世界を拡張しようと実写の続編『ゼイラム2』とアニメを同時に発表したという、現在でも珍しいタイプの企画だったらしい。
ジャケット等のキービジュアルは素晴らしい。雨宮監督が友人のなかでひとりだけ美少女を描ける桂正和にキャラクター原案をたのみ、高橋ナオヒトのキャラクターデザイン*1でアニメに落としこんだ。当時のアニメ美少女では珍しい唇の色を変える色彩設計も成功している。高橋ナオヒトが作画監督と演出を担当しているOPもサブタイトルのインサートなどもシャレていて良い。
しかし本編の作画は手ばなしに良いとはいいがたい。原画クレジットを見ればほとんどスタジオジャイアンツの仕事らしいが、制作の元請けを担当した葦プロダクションの限界を感じる。
一応は線が多いデザインなりに動かしているし、全体をとおして崩れてはいないが、影が少なくて絵として簡素。第1話の背景動画もリピートに毛が生えたくらいで、記憶よりもたいしたことがなく、目を引くほどではない。第4話からはキャラクター作画の影がやや多くて見ごたえが生まれていたが、OVAとしては当時としても水準レベルだろう。最終決戦の第5話から第6話でようやく良いアクションや背景動画がちりばめられたくらい。
物語は、地球の市街地を舞台に低予算なりに完成されたSFアクションホラーの原典と違って、完全に異星を舞台としてファンタジー感が強い。とはいえ雨宮慶太のビジュアルコンセプトをすみずみまで適用した和風SFとしては魅力的。演出などはアニメスタッフに一任しながらストーリーボードやデザインを大量に提供したそうで、それにアニメスタッフがこたえたことで全体に統一感がある。
各話で見ても、第1話は30分に『エイリアン』的なプロットをまとめて、ビジュアル以外に新味はないが悪くない。アクションとしては高橋ナオヒト演出の第3話がひとつの山場で、作画こそたいしたことはないが殺陣のアイデアが多くてコンテ演出には見どころがある。その第3話でゼイラムを兵器化しようとしていた会社の陰謀劇は終わり、第4話からはイリアが正式な立場となって義兄をめぐる因縁の戦いが描かれる。
どのエピソードもB級アクションホラーとして斬新な展開があるわけでもないが勘所はおさえていて、決着がついてすぐEDになだれこむあたり余韻を排したエンタメとして見やすい。
*1:他に数人がクレジット。