法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『スター☆トゥインクルプリキュア』第40話 バレちゃった!?2年3組の宇宙人☆

ロケットのある場所までたどりついた香久矢父を、星奈たちはアブラハム監督の助けでやりすごした。
しかし香久矢父はクラスメイトに接近して羽衣ララへの疑いを語り、クラスに不安が広がっていく……


高橋晃キャラクターデザインの作監*1に、村山功シリーズ構成の脚本で、プリキュアの存在が認知される重要エピソード。
今回は香久矢父は不和の種をまくだけで、ドラマの主軸は羽衣の孤立とクラスのとまどい。過去の救出エピソードをひとりひとり回想して、羽衣の転校と異変の時期が重なることにクラスメイトが気づくことに説得力がある。
ただし、第35話*2の生徒会選挙でクラスメイトの話を聞こうとした姫ノ城の詰問は、もっと羽衣を信じる台詞回しであってほしかったし、クラス代表と自認してふるまってほしかった。選挙の混乱を楽しんでいた軽部にしても、周囲に同調して羽衣を不審がるのではなく、むしろ面白半分でアウティングして羽衣を傷つけたほうが、キャラクターにそった言動になったと思う。
あるいは、混乱したため普段とは違うキャラクターで羽衣に接していることを自覚的に描いても良かった。同時変身時に天宮が瞬間移動させられる強引な展開を、あえて雑な瞬間移動にして笑いに変えたように。


とはいえ、大人を自認して背伸びしていた羽衣を星奈が等身大の存在として認めたことを重視して、「ララはララだよ」という平凡といっていい台詞が救いになったと実感できたのは良かった。
羽衣が自身の存在を、周囲にわかってもらえなくてもいいと明言したのも、こういう子供向けアニメでは珍しい良さだった。前話*3で天宮が強いまま終わったのは惜しいと思ったが、まだ弱い羽衣のドラマとの重複を避けたのなら理解できる。
そうしてプリキュアの特殊能力にたよらずクラスメイトの不信が解かれ、離れて監視していた香久矢父の不信感へとドラマが戻り、次回へ引いていく。物語をきちんと一話でまとめつつ、連続ストーリーも構成されている。


演出は第2話*4以来の畑野森生で、羽衣と星奈のつながりを改めて描いていく。
扉や窓で遠景と近景をわけたカットを多用し、奥行きのあるリッチな画面を作りつつ、羽衣とクラスメイトの分断を強調。遠近どちらか一方に影を落とすことで、物語の印象にあわせて画面を暗くする手法も印象的だ。そしてその境界線を星奈はふみこえ、夕暮れの図書室で羽衣を抱きすくめる。
歌いながら変身するという今作の特色が、今回のように人前で堂々と変身するエピソードでは、より登場人物の決意を強く感じさせたのも意外な良さがあった。