薄暗がりでふたりの男が争い、格闘していた。そしてとりこわし予定のビルで死体がふたつ発見される。死体の一方は管理者で、心臓に持病をかかえたところに階段でのぼって死体を見つけたため心筋梗塞で亡くなったと判断された。
もう一方の死体はさまざまな小さな犯罪をおこなっていた半グレで、背中に謎のキノコが生えていた。杉下がキノコに着目して専門家をたずねると、環境保護に重要な役割をもたらすかもしれない新種だという……
このドラマで時々ある、架空の技術や生物によって奇妙な犯罪が発生するSFサスペンス。長期シリーズでありながら平気で一般的な刑事ドラマを逸脱するところが作品の魅力ではある。
昏倒して雷鳴の夢をさまよう杉下や、キノコのネーミングをつかったピスタチオギャグで息抜きしつつ、捜査をすすめるごとに新情報が出てくるので時間いっぱい楽しめた。オマケで死んだような管理者が、キノコの設定に深く関わってくる逆転もミステリの味わいがある。
冒頭や回想の格闘戦もなかなか良かった。ただ最後の格闘戦は、杉下や亀山を演じる俳優の年齢がどうしても出てしまうのか、ふたりがかりなのに動きが遅くて、対する犯人の動きも回想より遅く見えてしまう。こういうエピソードでは身体が動かせる俳優を応援キャラクターとして入れてほしい。
また、今回の架空キノコは物理的に存在しうる生態だとは思うが、国際問題に発展しそうな性質が絶妙すぎて、サブタイトルを具象化する二面性も物語の都合でつくられた設定という感は否めない。それもふくめて一種のSF寓話としての面白味はあったし、環境問題を冷笑しない話運びも悪くはなかったのだが……