法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『わんだふるぷりきゅあ!』第41話 ユキ・オンステージ!

 出演してほしいとたのみにきた演劇部に対して、ユキは断りつづける。そこに鏡石神社の娘が来て、狼と出会った人の日記があると悟にいう。その不思議な日記の内容を知った演劇部長は、うまく書けなかったロミオとジュリエットをやめて、狼と人が友情をはぐくむオリジナル脚本を一夜で書きあげた。
 そして断り切れなかったユキは女神に、子犬の演技が認められたこむぎは飼い犬を演じることとなった。しかし部長が演じていた狼のワイルドさにひかれたザクロは、劇のなかで狼が人間化したのにあわせて部長が着ぐるみをぬいで、騙されたと怒りはじめる……


 井上美緒脚本で、以前に登場したクラスメイトをつかって演劇をつくりあげる気楽なエンタメを展開しつつ、過去の記録や劇中劇の内容で作品のメインストーリーやテーマも同時進行で見せていく。こむぎの暴走からアドリブで変わった結末は、この作品自体がめざす結末なのだろう。他にも、ユキの戦闘中にニコが身代わりになったり、演劇モチーフの物語でアドリブが効果をあげる面白味はけっこうあった。
 日記を書いている人間がことさら謎めいた存在としてあつかわれていることや、狼の正体が人間だったことに過剰に落胆するザクロの姿を見ると、少し前から思っていたがガオウの正体は人間に絶望した人間ではないかという印象がいっそう濃くなる。絶滅動物の立場で人間を糾弾するというあつかいにくいテーマを、絶滅動物を代弁して糾弾する人間に置きかえることで、子供向けアニメでも消化しやすくするつもりなのかもしれない。
 作画は全体的に水準的で突出したところはなかったが、カメレオンのガオガオーンの舌が質感を感じさせるように塗りわけられているのは良かったかな。ただ現在ではカメレオンの体色変化は擬態ではないという説が有力だと思っていたのだが、無批判に風景にとけこむ能力があるように描写していたことは残念だった。ガオガオーンは伝説の架空の能力をもつこともあるのだから、実際の生態と同じではないと悟が注釈しても良かった。