最初にワシントンポストが疑惑を報じて、マスク氏は否定したが、CNNの記事で疑義がとなえられている。
イーロン・マスク氏は不法就労だった? 本人の投稿で新たな疑問(1/2) - CNN.co.jp
ワシントン・ポスト紙の報道は、裁判所の記録や会社の文書、かつての会社関係者への取材に基づく。この会社の元最高経営責任者(CEO)は、投資家がマスク氏の強制送還を心配していたと証言した。
マスク氏本人もかつては、過去の自身の在留資格を「グレーゾーン」と形容していた。
マスク氏はそうした投稿に応じて「私はJ―1ビザを持っていて、H1―Bに切り替えた」と書き込み、「彼らはそれを知っている。私の記録を全部持っているから。選挙の敗北で彼らはやけくそになっている」と付け加えた。
マスク氏はJ―1ビザのスポンサーとなった機関も、ビザを取得した年も明らかにしなかった。
CNNが取材した専門家によると、交換交流用のJ―1ビザから特殊技能での一時就労用のH1―Bビザに切りかえることはできるが、マスク氏が過去に説明したように大学院からドロップアウトした場合は不可能だという。
素人考えでは、なんらかの合法的な抜け道をマスク氏が見つけたり、なんらかの便宜をはかってもらえた可能性はあるかもしれない。しかし報道を総合して考えると、かつてマスク氏は不安定な立場を自認していたことまでは事実だろうし、そもそも移民であることは間違いない。
学生として入国しながら最初から経営することで成功した「不法移民」だったという今回の報道は、形式的な自由競争が格差を増大するパラドックスを思い出させる。スタートは形式的に平等でも、最初に何をしてでも先行できた者がさらに先行できる材料を入手できるのだから。もう現在まで先行するとマスク氏が司法によって不法就労と判断され、多額の懲罰的罰金を払わされても、大富豪であることは変わらないままだろう。そうして何も制約がないかぎり、全体として格差は世代をこえて継承され増大していく。
そしてそのように先行できた「不法移民」が当然のように力をもった時、後続の不法移民に対して仲間意識どころか敵対意識をもつことに不思議はない。それを延長して考えれば、不法移民にきびしい政策を公言するドナルド・トランプ氏を、少なくないヒスパニックやラティーノが支持*1する感情の動きにも不思議はない。
アングル:トランプ氏返り咲き、ヒスパニックと労働者の支持上積みが原動力 | ロイター
エジソンリサーチの出口調査によると、特にヒスパニックの有権者に占めるトランプ氏の得票率が14ポイントも増加したのが目立つ。トランプ氏を選んだと答えたヒスパニックを自認する有権者の割合は約46%で、20年の前回大統領選では32%だった。
……不思議はないが、人間の理性と感情はそれを超えることができるとは思いたいし、思いたかった。超えている人もいることが数字にあらわれていることは、せめて忘れまい。
*1:あくまで現時点の調査において過去から変化して支持率の数字が拮抗しているだけで、トランプ氏を圧倒的に支持しているのは白人男性であったり超富裕層であることは予想されたとおりのようだが。