法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『パットン大戦車軍団』

 第二次世界大戦、戦場においてひたすら前進をうったえる米軍の将軍ジョージ・パットンが人気をあつめていた。英軍のモンゴメリー将軍の活躍を助ける役割をあたえられ、アフリカからヨーロッパへと戦場をうつしていくが、じれたパットンは速度をあげていく……


 1970年の米国映画。パットンという奇矯な人物の、軍隊における戦意の高揚から戦争の終結までを描く。『猿の惑星*1のフランクリン・シャフナーが監督をつとめた。

 約20年前に視聴した時は断片的な鑑賞しかできなかったが、今回は体調が悪かったが2時間50分を休憩なしで見終えることはできた。


 シネマスコープサイズだが、どっしりカメラを固定するよりも、パンで広々とした景色を見せるパノラマ感が強い。ちょっと高いカメラ位置から俯瞰して、人物や兵器が多数いる情景を見せていく。車上のPOVカットが多いところも目を引いた。
 ミニチュア特撮は使用していないようだが、スペイン軍の協力をえて複数の実物戦車*2を展開したり、軍用機による機銃掃射や爆撃もあって現在でも見ごたえがある。ただ機銃掃射の弾着がいかにも火薬でつくったような小ささで迫力不足だったり、どう考えても傷ついたり破壊されるべき人物が傷を負わない描写は気にかかる。砲撃で兵士がふきとぶスタントアクションはあるが流血はせず、死体も前半は五体満足。後半に死体が流血したり損壊した戦場跡も出てくるものの、あくまで当時らしい技術の限界を感じたのが正直なところだ。同じようにロケ撮影にこだわってミニチュア特撮をつかわない『アラビアのロレンス*3は、爆撃の迫力は充分あったし、攻撃された人をはっきりとは見せない上品さで流血や肉体損傷がなくても不自然に感じさせなかった。
 後年でいうPTSDをパットンが頭から否定するところも感心できない。もちろん劇中でも批判されるようにパットンの言動は当時でも批判の対象だったわけだが、映画制作者がきちんと否定的に描いているかというと判断しづらい。まだ同じ連合国として協力するソ連の脅威をメディアの前で口走るあたりは公開当時は正しい予測にもとづく正論にも感じられたかもしれない。