過重労働を規制する「かとく」の職員が転落死した。現場に居合わせたジャーナリストの不審な行動から、特命係は疑念をいだく……
前シーズンから参加した児玉頼子の脚本。外国人技能実習制度をめぐる不祥事の隠蔽という社会派テーマを素直に力強く描いた。
外国人労働者も丁重にあつかわれていたseason16の16話*1とも、証言してくれた在留者を入管にひきわたしたseason17の第9話*2とも違って、問題がある制度をなぜ告発できないのかという社会のありように正面から向きあう。
展開のほとんどは予想通りだが、ジャーナリストの位置づけだけは、普段のひねった展開と比べたことでミスリードされた。
ジャーナリストはWEBメディアに移りながらも有能でありつづけ、実際に隠されていた事件の真相を半分あばいた。そこから技能実習生の労働問題が原因となっていることをつきとめながら、告発者の葛藤をおもんばかったため、より深い真相を報じることをジャーナリストは断念した。
その断念をしたことが、杉下右京と後輩ジャーナリスト*3に指弾される。自己保身や隠蔽加担といった悪事ではないのに、弱者の声なき声をひろいきれなかったことをジャーナリストとしての挫折と位置づけ、後輩ジャーナリストはスクープにあわせて批判記事を展開する。
追加報道の機会すら与えない理想の追求ぶりは予想できなかったし、同時に杉下に象徴されるこのドラマらしい峻厳さがあった。
ちなみにクレジットによると日本版ハフポストに取材したようで、WEBメディアの情景も短いなりにリアリティがあった。
NHKドラマ『フェイクニュース』*4は完成度が高いながらも単発だったが、いずれフィクションの舞台として定着していくだろう。
*1:『相棒 season16』第18話 ロスト〜真相喪失 - 法華狼の日記
*2:『相棒 season17』第9話 刑事一人 - 法華狼の日記
*3:ひたすら形式的な正義を追及する杉下と違って、扇動的なまでのジャーナリズムに徹せなかったことを批判していると感じられた。