土地の払い下げにまつわる収賄疑惑で、若手政治家が嫌がらせを受けていた。嫌がらせ対策にかりだされた特命係だが、杉下にはその家と因縁があった。
婿養子な若手政治家の義父もまた収賄疑惑にかけられ、自殺した過去があるというのだ。義父と違って若手政治家は疑惑を堂々と全否定するが……
斉藤陽子脚本で、政治家一族という階級に踊らされる男と、呪われた女の歴史を描いていく。
総理がらみで土地を格安にはらいさげる疑惑や、匿名の告発を報じるジャーナリズムなど*1、導入こそ森友学園を思い出させるが、物語の本筋はそこにはない。収賄疑惑は中盤で確定し、出番を終えたジャーナリストは後半では活躍しない。「忖度」された総理も追及の対象にはならない。
真相は最も怪しくて関係者へ権力をふるえる人物が全ての黒幕という単純さで、謎解きの面白味こそなかったが、その黒幕の情念に満ちた存在感はなかなかドラマとして見ごたえあった*2。
政治家一族らしい屋敷のロケーションと、階段をのぼった2階で変死がくりかえされるシチュエーションで、下界から隔絶した論理で起きた事件ということが位置関係で演出されたことも印象的。
ただ、収賄の音声や映像が公開されたことで若手政治家が決定的に追いつめられるのだが、甘利明氏が経済再生相を辞任しつつも議員の座にとどまっている現在を思うと、もう一押ししないと現代日本ではリアルではないかな、とは思った。報道や野党の追求では足りず、検察が動いて政党が切り捨てないと、開きなおるだけで追及をやりすごせてしまう。真犯人の立場からすると、一押しする展開そのもので意外性も表現できたと思うのだが。
逆に、疑惑を報じようとするTV局らしきスタッフで、カメラマンがマスクをしているのは、ドラマには珍しい現代性だと思ったし、それでいて不自然に感じなかった。これなら普通にレギュラーからモブまでマスクを付けさせても意外と成立しそうだが、やはり俳優の顔を隠すことは避けたいのか……