法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 Season20』第3話 復活~最終決戦

仮想現実世界へ突入した杉下と冠城と青木。一方、一課の取調べを受ける内閣情報官は、柾庸子の自殺について黙秘をつらぬいていた。
やがて鶴田官房長官もまた仮想現実世界へ突入すると、死んだはずのIT長者と柾庸子があらわれた。鶴田は特命係が演じていると喝破するが……


3連続の輿水泰弘脚本による、シーズン初回エピソードの完結編。この3話目のみ時間枠は拡大せず。
全体として仮想現実世界のディテールが甘いことは変わりないが、他人のアバターを演じられる技術は今回の冒頭ではっきり描写した上で、さらに死者が現れた真相でひっくりかえす。
『相棒 Season20』第2話 復活~死者の反撃 - 法華狼の日記

とりあえず特命係の前に現れた謎は全体として意識的にまきちらされているようなので、悪人を告発するために実行犯と思われる青年がやったというあたりが真相だろうか。

前回の予想は大外れ。「自殺を偽装するには鍵もかけず冷房をつけたままにしていた中途半端さ」は悪人の告発という側面もなくはないが、ずっと切実な心情もあったし、そのような状況をつくれる人間関係が伏線ともなっていた。
考えていた以上に死者と生者の境界線をまたぐ動きが状況を複雑にしている。トリックは大がかりで無茶だが、超人や超技術にまみれた前回と比べれば現実性があるので、納得しやすい。これは前シーズンラストと同じ良さだ。
『相棒 Season19』第20話 暗殺者への招待~宣戦布告 - 法華狼の日記

今回に明らかになった真相をそのまま描いたなら別だが、前回の結末から示された殺し屋設定よりは相対的にリアリティがあることで、意外性と説得力が両立していた。

さらに屋敷の見取り図で、身近なデジタル技術に古典的な暗号をくみあわせたトリックも、後出し気味だが謎解きとして悪くなかったし、IT関係らしい小道具としてディテールをもりあげてくれた。
「復活」というサブタイトルは、ずっと以前に死んだ官房長官への杉下の想いにも重なり、ドラマのしめくくりを飾った。


今シーズン発端の不可解な自殺が、特命係を巻きこみつつ連鎖的に事件を生みだしていった構図もいい。
ただ、だからこそ3話に分割せず2時間SPで一気に描いたほうが、発端の出来事の印象が薄れず、登場人物の驚きに同調しやすいように思えた。
印象づけと印象そらしを同時にやらなければ説得力と意外性が両立できない推理ドラマにおいては、話数をまたぎすぎないのが良いのではないだろうか。