偽造クレジットカードを使ってATMから金を引きだす「出し子」が大量に検挙された。その半数は中国人だった。
関連して、中国人を雇っていた町工場社長の殺害事件が注目される。社長は大量のスマホを隠し持っていて……
複数の社会派テーマをくみあわせたseason15第12話*1が印象深い池上純哉脚本。
今回も社会派テーマをおりこみつつ、現代的な犯罪を描いてみせる……のだが、町工場側が中国人従業員をていちょうにあつかっていたので、技能実習生問題などにはふみこまず。あくまで日本と中国に分断された人々が、弱い立場で助けあおうとして罪を犯す哀しさを描いていた。
残念なことに、ミステリとしての面白味は弱かった。
特にトリックの中核をなす通訳捜査官が、いかにも態度が怪しげで、通訳時の操作で捜査を混乱させていることが明らか。せめて冷徹な性格の、中国人を蔑視しているキャラクターのように描けば、ミスリードになったかもしれないが。
殺害事件の真犯人にしても、被害者の町工場社長が二代目というあたりで想定の範囲内。そもそも町工場の資金繰りが苦しいというあたりで、もうひとつの事件との関連もわかりやすい。町工場の経営そのものは順調だったが、社長個人が金に困っていたと特命係がつきとめる……くらいのひねりはほしい。
良かったのは、事件を目撃したらしい少女と、被害者がやりとりしていたメールの位置づけ。日本語が話せないため中国語っぽい漢字の羅列でやりとりしていたことで、うまく設定にあわせてミスリードさせる内容になっていた。この目撃者と被害者の男女関係という疑惑を、通訳捜査官の操作が判明した後まで引っぱれば、ぎりぎりまで真犯人をミスリードさせられたかもしれない。ちょっと残念。
*1:感想はこちら。『相棒season15』第12話 臭い飯 - 法華狼の日記