そういう意味では、たとえば外伝作品の『機動戦士ガンダム0080』などは、作品全体として反戦作品といえるかもしれない。
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華々しい兵器の活躍も、個人の信念をかけた自己犠牲もあらかじめ無意味なものとして終わる。人道的な理由であっても戦闘は主人公の課題の解決に寄与しない。
映像ソフトをひとつずつ視聴者が購入するOVAという形式で初めて発表されながら、戦時下の一般人の少年を主人公としたことで、約半分のエピソードで戦闘シーンがほとんど存在しないことも特色だった。
少年は戦争をへて少し大人になるが、その大人になるということは、戦争が始まることを喜ばないというかたちで示される。
しかし、それでも好戦的な描写を抽出して楽しむことはできてしまう。
売り上げで見ても、OVAは少しずつ落ちがちなところ、タイトルに使われる兵器「ガンダム」が初戦闘する後半の第4話で上がったという。
好きな場面だけくりかえし視聴できることが想定されるOVAという媒体で発表されたことも、そのような受容を後押ししたのだろう。
さらに、次にOVAとして発表された外伝作品の『機動戦士ガンダム0083』を思い出すと、より明確に難しい問題として立ち上がってくる。
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戦争にのめりこんでいく男たちを描いたことで、ガンダムシリーズでも特に好戦的と受け止められがちな物語。しかし全体としては、やはり戦争賛美にならない構造になっている。
華々しい兵器の活躍も、個人の信念をかけた自己犠牲もあらかじめ無意味なものとして終わる。人道的な理由であっても戦闘は主人公の課題の解決に寄与しない。
主人公が戦争によって人間的に成長するという物語にすらなっていない。むしろ戦争の価値観を内面化していき、戦う以外の選択肢を見失っていることがくりかえし指摘される。主人公の仲間たちも最終的には本編での敵組織にとりこまれて終わる。
主人公らの視野のせまさを批判するのが女ばかりで、それはそれで一種のジェンダーバイアスではあるが、きちんとくむべき意見として配置されていることも間違いない。敵組織側の女性も実利を優先しつつ虐殺を止めるというかたちで、信念に酔った戦闘を否定する。
しかし、そうした身勝手なロマンへの批判は、必ずしも観客に納得できるかたちで配置できていたとはいえなかった。
特に兵器開発者として登場したヒロインは、終盤で主人公の決闘的な戦いに割りこみ止めるという行動をとったが、ただの恋愛的な三角関係として観客に受け止められたし、制作者自身もヒロインの性格が悪く見えるようになったことを認めていた。
敵組織側の女性による利益優先主義には一定の理解がえられていたが、劇中では敗北して誰も主張を知らないまま終わり、アクセント以上の存在にはならなかった。
もちろん、こうした問題はアニメにかぎった話ではない。
反戦と評されがちな実写映画でも、そこに迫真の戦闘シーンが描かれていれば、観客の娯楽的な興奮を呼びおこす。
『岩井俊二のMOVIEラボ』#5 ドラマ編 パート1/#6 ドラマ編 パート2 - 法華狼の日記
大林宣彦監督の指摘が重い。どれほど反戦映画として撮ろうとしても、スクリーンに戦闘を映せば、直接に危険のない刺激として娯楽になってしまう。
逆にいえば、作品そのものは面白くても、戦闘シーンがつまらなければ戦争賛美ではない作品*1として受容されるだろう。
そこで戦争を題材にしてロボットを玩具として売るためのアニメでそのような作品があるかというと、実際に『マクロス7』という怪作が存在する。
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戦争をくだらないと叫んで、戦場の真ん中に飛びこんでいく主人公は、侵略してきた謎の敵に音楽を聞かせようとする。その音楽を聞かせる機器を敵陣へ撃ち込むためにロボットに乗る。
華々しい戦闘と歌が売りのマクロスシリーズだが、この『マクロス7』の戦闘シーンは退屈なルーチンワークでしかない。敵は毎回同じように攻めてきては、同じように退いていく。敵も味方も量産化された特色のない兵器を操り、その戦闘風景はほとんど使いまわしの映像で描写。変わり映えのしない情景が1年間にわたって放映された。
現実においても、華々しく興奮できる戦争などは、特異な一瞬のことでしかない。現代戦で歯車として動員される多くの兵士にとって、戦場はルーチンワークでしかなく、戦闘よりも訓練や行軍や待機といった退屈な時間が長いのだという*2。
『ジャーヘッド』 - 法華狼の日記
特色は、戦争映画でありながら主人公が戦闘に直面しないこと。身近な死者といえば、訓練での事故死などの戦場とは遠くはなれたものばかり。基地でも戦場でも訓練や行軍がはてしなくつづく。
『マクロス7』はTVアニメということもあり、ライブ映像や歌唱にしても、現在のTVアニメと比べると動きが少なくて、あまり見せ場としての力はない。それでも、放映当初は主人公の奇行に困惑して迫真の戦闘シーンを望んだ観客ですら、さっさと戦闘シーンを終わらせて歌を聞きたいと望むようになっていった。
同じルーチンワークなら、最初から趣味嗜好でおこなわれる歌が、戦争に興奮度で劣るはずがなかったのだ。