法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第31話 無音の戦争

アーブラウとSAU、ふたつの経済圏の武力衝突は、なかば膠着しながら半月間にわたってつづいていた。
鉄華団地球支部はアーブラウ側で戦闘をつづけるが、ガランというアドバイザーに少しずつ乗せられていく……


藤澤俊幸コンテと関島眞頼脚本は作品初参加。急に時系列がとんで1話分を見逃したかと思ってしまったが、それはシリーズ構成の問題だろう。今回の物語を2話にわたって描けば、膠着した戦場の終わりなき気分を表現しやすかったはずだ。
また、敵味方の勢力図がいりみだれすぎていて、もともと各勢力の名称がわかりやすくないこともあって、状況を追いにくかった。まるで『機動戦士Zガンダム』のようだ。せめて、数話前に交流をもったばかりの鉄華団ギャラルホルンが敵味方にわかれている現状についてくらい、何かしらの論評が作中にほしい。


とはいえ、単独のエピソードとしては、この作品に求めていたものが見られた気分でもある。本部との連絡がとれない不安をかかえたまま少年たちの視野がせばまっていくドラマとして、戦争を題材としたロボットアクション娯楽として、とてもよくできていた。
長雨がつづく薄暗い戦場を曳光弾が照らしつつ、すぐに後退するもどかしさ。タカキを追う敵MSがガランのMSに倒される平原の開放感。兵器がすすむ野原から舞いあがる花びら。この作品の戦闘回らしく、よく状況にそった良い絵が多い。
事態が膠着する展開で、敵側ではなく主人公側に黒幕がいるという構図も珍しく、大人を信用できない少年たちの気分を物語として支える。助けがどこにもないからこそ、部下がガランを隊長あつかいしていることに反発していたタカキが、命を助けられただけで乗せられていく心情が理解できる。
武力衝突の原因を、エイハブリアクターによる偵察機の墜落事故に設定して、それが予想以上に状況が緊迫していた証拠ともなるところも、作品の独自設定をうまくつかっていて、感心した*1

*1:設定を細かく物語に反映させていることから、視聴中は鴨志田一脚本かとも予想していたが、状況を俯瞰するようなモノローグは雰囲気が違うので、誰が脚本なのだろうかと迷っていた。