このドラマ編にて、映画の歴史をふりかえるトークバラエティ番組が終了。1分スマホ映画の投稿受付も終わった。
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ゲストの大林宣彦監督は、詩的な言葉をならべながら、俯瞰するように理知的に各作品を評していく。自作品では映画の虚構性を前面におしだすこととの対照が面白い。
まず#5は、『ゴッドファーザー』の斬新さから導入。ドラマという大きすぎるカテゴリ全体ではなく、人生の断片を見せる「スライス・オブ・ライフ」という物語技法などを題材に論じていく。
長い時間を、どのように映画の短い尺へ凝縮していくか。各年代から少しずつピックアップする『市民ケーン』『ガープの世界』に、人生を象徴する短い時間を切りとった『十二人の怒れる男』、描かないことで空白を浮かびあがらせる『父ありき』『秋刀魚の味』。使われた技法で分類していくのは明快でわかりやすい。
かつてNHKで放映されたドラマ『川の流れはバイオリンの音』*1も紹介された。知る人ぞ知る有名作品だそうで、たしかに現在に見ても新鮮な語り口だ。
1分スマホ映画ロードショーは、まず亡くなった姉の部屋を整理する姉妹を描く『あくる日』。カメラをほとんど固定して、1カットで見せていく。断片的な台詞から、少しずつ死者が自殺したらしいことを説明し、残された家族の思いを浮かびあがらせていく。全体的にうまいが、評者がほめていた髪をさわる芝居は浮いていて、むしろ記号的に感じられたかな。せめて先に肩を叩いたり、明らかに髪がほつれていたり、立ち上がる時によろけて近づいたり、そうしたワンクッションをはさんでほしかった。
忘れられない恋のことを男が思うのが『Never Forget』。女性の言葉を聞きたくないからとヘッドフォンで遮断しようとしたり、これも記号を活用している。ちょっと格好つけすぎで好みではないが、それを照れずにやりきっているのは良かった。
一般投稿の『何をさがしてたの?』は、横になる女性と、夜景を交互に映すだけ。まさに「何をさがしていたの?」という内容だが、はっきりした答えは何もない。一発ネタとしては許されるし、けっこう映像は綺麗だったが、それだけかな。
同じく一般投稿の『扉が開く』は、扉を出入りする女性の足元で始まり、しかし扉とは関係ない走る姿も映し、そして女性の足元だけを見せて終わる。なぜ「扉」に関係のないカットが多いのだろう?と首をかしげていたが、これは観客席にいた学生の解釈が見事。部屋ではモノクロ調なのに、走る場面はビビッド調。そして最後に帰宅した場面ではバッグだけビビッド。灰色の日常を、オシャレして一瞬だけ抜け出せた、それを「扉」が開いたと表現したのではと指摘する。これは評者も深々と納得していた。
最後は一般投稿ホラー部門の『大晦日』。白石晃士監督作品のように、日常の一幕において奇矯な言動を始めた男を、カメラが追いかける。雰囲気は良かったが、ホラーらしいオチを映像で最後に見せられないので消化不良。カット割りを工夫して、男が最後に飛び降り自殺したかのように見せるとかもできたのでは。
次に#6は、ドラマというカテゴリから何を注目するのかというと、まさかの戦争映画。
第一次世界大戦から米国に逃れてきた人々がハリウッドをつくったという導入から、戦闘ではなく敗戦後の貧困を描いた『自転車泥棒』、製作状況も戦争だった『地獄の黙示録』、ロシアンルーレットに戦争全体を象徴させた『ディア・ハンター』といった作品を紹介していった。
この回は大林宣彦監督の指摘が重い。どれほど反戦映画として撮ろうとしても、スクリーンに戦闘を映せば、直接に危険のない刺激として娯楽になってしまう。また、偵察機用に小型化されたカラーフィルムがカラー映画を発展させたという説もあるという。どのように効果を予想して戦争を表現するべきか、そして社会のどこに戦争とのかかわりがあるか、映画にかぎらない話として勉強になった。
1分スマホ映画ロードショーは、まず登場したのが、浜辺を歩きながら携帯電話で女性が話している『寄り添う』。画面の奥に海が広がる映像が綺麗なのと、携帯電話が切れたかと思えば女性の横に男の手だけあらわれるオチが雰囲気ある。ただ、最後の男の手が電話の相手なのかどうか不明確なので、消化不良すぎる。誰が現れたかは明確にしても、その後に何が起きたかを想像する余地は残るのでは。
次に、女性が鏡を見ると、違う姿の女性が写っていた『鏡の自分』。これはイケてない女性がイケてる自分になろうとする物語だとわかるが、説得力がないのが難。アニメのような媒体か、よほどメイク技術が映像に特化していないと、ただ記号的に眼鏡を外して髪型を変えただけに見える。
そして、一万円札を口から出せるようになった男が、その能力を披露しても女性にふられる『カネと人生』。ショートショートとしてはまとまっていたし、コントのような画面表現も手間がかかっていて良い出来。ただ大林監督が指摘したように、金を1枚だけ口から出すのではなく、とめどなく出すべきだったという指摘は納得。
最終回なので、一般投稿作品は短評とともに連続で見せていく。
特撮テーマの『朝令暮改』は子供たちの異能バトルごっこが、一瞬で飽きられるまでを描いた。たった2人しか登場しないのに誰が攻撃したかわかりにくいというイマジナリーラインの問題が指摘されていたが、特撮部分が少なかったのも残念。
SFテーマの『I love TOMO-chan』は、ピクトグラムのような謎の人型が、人間と競争して負けつづけるという小ネタ。とにかく映像のクオリティが高く、デフォルメしたデザインによってVFXの体感クオリティを底上げしているのも見事。
特撮テーマの『かわいいパンダショー♪』は、パンダショーが着ぐるみだったというオチを、コマ撮りアニメで見せていく。日本の怪獣映画が多用した着ぐるみと、過去の米国の怪獣映画が多用したコマ撮りが同居する画面が楽しい。ただ、さすがに短時間で制作したためかコマ撮りの質は粗いか。
ドラマテーマの『com plex』は、たくさんの料理をならべて食べていく女性を、正面からカメラで撮影。特にドラマやストーリーはないが、色彩表現がきれいで、一瞬アップにするタイミングがうまく、何かのCMを見ている気分になった。
ドラマテーマの『舞台裏』は、平凡なドラマが始まったかと思うと、途中で鳴りだした携帯電話から劇中劇と判明する。ある意味では映画館で作品の冒頭に流れても不思議ではないつくり。評者が指摘するように、劇中劇と劇中現実で撮影技術を変えているのもうまい。