法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』

異星人の侵攻を人類=米国がしりぞけてから20年。人類は異星人の技術を利用して文明を発展させ、防衛も準備万端に整えていた。
そんなある日、謎の宇宙船が土星の輪にあらわれる。その宇宙船はあらゆるものを吸いこみながら月面基地へせまってきた……


2016年の米国映画。1996年の異星人侵略映画『インデペンデンス・デイ』の直接的な続編で、ローランド・エメリッヒ監督を初めにスタッフや俳優の多くが続投した。
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前作を賞賛した観客からも批判した観客からも評価が低いと聞いていたが、たしかに設定のスケールだけ大きくなって、全体が薄まった感じだった。前作と同じく大味なわりに、派手さが弱くて満足感がない。


とにかくエメリッヒ監督の作風なのか、細部へのフェチズムがないことがVFX多用映画として痛い。
前作を受けて人類文明が発展した架空世界になっていることは納得できるが、そのため異星人との戦争で破壊されるのが3DCGでつくられた空想的な建造物ばかり。そういう建造物の実在性を人間との対比で感じさせる描写も少なく、全体として3DCGアニメのような印象となった。
実在する都市の破壊は中盤に短くまとまっているだけ。こういう映画では名所旧跡をよく破壊するという定番をメタ台詞で言及しながら、そうした描写はロンドンの橋くらい。前作より巨大な宇宙船が地球を覆っているのだから、エッフェル塔紫禁城くらいは景気よく破壊してほしかった。
前作で素晴らしいミニチュア爆破がされたホワイトハウスが今度は土砂に襲われるが、これは短く全景カットが映るくらいですまされた。今回の敵攻撃はスケールが大きすぎて全景カットが多すぎて、実在する場所でも3DCGアニメのような印象になってしまった。ハリケーン後のような水浸しの街を子供たちが進むような、もっと実感をもたせる場面が必要だ。
せっかく人類技術を発展させながら、実戦は現代兵器の延長か、せいぜい巨大なビーム砲を撃つだけなことも落胆した。せっかくアームをもつ作業船を出したというのに、そのアームを活用するのは設置に失敗したビーム砲を支えなおす序盤くらい。月面で謎の宇宙船が破片をまきあげる場面でも、外壁をひろって盾にするような機転をきかせないし、乗りおくれたふたりをかっさらうこともない。そしてそれ以降は活躍しない。
巨大な異星人の女王が戦う場面もあるが、空想的な基地に侵攻する全景カットか、戦場にまぎれこんだ民間バスを砂漠で追いかけるだけ。もっと怪獣映画のようなカットで巨大感を出してほしかったし、作業船のアームと殴りあうくらいはしてほしかった。


物語については最初から期待していなかったが、人が死んでいる状況でつまらないギャグが多すぎる。スピルバーグ監督のように悲惨さを強調するブラックギャグというわけでもない。
今どき珍しいテレパシーの活用ぶりが良くも悪くも『ゴジラvsビオランテ』を思い出させたり、前作で毀誉褒貶あった自爆攻撃で異なる展開を見せたり、ちょっと良いところもある。ただ、もし前作への批判を意識したのなら、最後に活躍する軍隊が各国の混成軍くらいの描写が見たかった。
あと、エメリッヒ監督がゲイをカミングアウトしているためかどうか、老人ふたりの博士BLだけはドラマとしてけっこう良かった。実話を改変した『ストーンウォール』では白人優先描写が批判されたと聞くが、フィクションに厚みをもたらすくらいはできたようだ。