法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『相棒 season16』第11話 ダメージグッズ

断崖を見つめる少女4人。そこから時間がとんで、ロンドン研修から陣川が帰国し、特命係へ顔を出す。
陣川はロンドンで知りあった女性を紹介。その女性の友人が自殺したことに疑惑があるという……


真野勝成脚本による陣川帰還。女性への惚れっぽさは残しつつ、ぐっと落ちついた雰囲気で事件にあたっていく。関係者の暴走を止める姿も、一時退場を受けたドラマではある*1
対するゲストキャラクターの女性は、かつて福祉施設へあずけられた少女。その仲間も、やさぐれて悪い男にひっかかったり、良き妻になっていたり、養子から議員にまでなっていたり。
悪い男がらみの麻薬や、少女時代の売春、その背景としてヤクザもかかわってきて2課の出番も多い。おかげで結末で陣川が2課に配属されたことも自然に納得できた。


なお、誰が過去を隠したかったのかということや、そこから犯人になりそうな人物が善良であることから、真相は見えすいているといっていい。
しかし、かつて福祉施設で育った者として児童憲章を高らかにうたう姿は、日本のドラマでは珍しいほど正面からの人権賛歌として感心できた。その憲章が高い理想ではなく普通になされるべきことだという位置づけも良かった。
責任をとれない子供時代の、罪にもならない過去に足をとられることも、日本における女性政治家のつまづきに通じる。収賄や縁故政治や人権軽視よりも社会的なスティグマが政治家の欠点としてあつかわれる、そんな社会問題を描いているようにも見えた。

*1:ただ前提となる関係者がナイフを出す描写は前振りが少なく、唐突に感じられたが。自殺しようとした過去と、自暴自棄の方向性が異なる。