海底の研究基地で巨大ロボット「モビルスーツ」の操縦を担当していた元軍人マーク。ある日、沈没したモビルスーツを救助したマークは、宇宙から来た抵抗者と地球議会軍の衝突に巻きこまれる。そして人類を食糧危機から救う発光技術の争奪戦がはじまった……
アニメ『機動戦士ガンダム』を原作として、外国の制作会社とスタッフキャストで実写化した、SF長編TVムービー。1999年にイベント上映され、2000年12月に短縮版がTV放映された。
物語は約1時間半でそつなくまとまっているが、良くも悪くも突出したところはない。新技術を目的として、ひょんなことから青年が身近な人間関係を離れて抵抗組織に参加し、勝利をつかむまでをシンプルに描いていった。
ニュータイプ等のニューエイジ的な設定はないし、モビルスーツは既存技術であって兵器開発競争みたいなシリーズの定番もない。米国らしいSFドラマのプロットをなぞるだけでオリジナリティや驚きはないが、おかげで破綻もない。
地球側を白人ばかりで構成して、宇宙側で多様な人種をキャスティングしていることも、最低限のことをやっている印象だ。最後まで引っかからずに見れて、しかし後に残るものがない。
10億円という制作費は邦画なら大作だが、欧米なら当時でも低予算の部類だろう。地球の描写はせまいセットや既存の建物でロケしているらしく、宇宙もどこかの植物園で撮影したようだ。プロップ類もありあわせですませているようで、あまりシリーズらしさをビジュアルで感じない。
何より3DCGで描写されたモビルスーツなどのVFXは現在から見ると厳しいクオリティ。いやリアルタイムで放映版を観た時点でも、ゲームのムービーと大差ない印象だった。おそらく同じ予算で日本の3DCG会社にまかせたほうが良い出来になったと思う。
たとえば山崎貴初監督作品の『ジュブナイル』も放映と同年の2000年に公開されている。わずか5億円の制作費で精緻なVFXを見せた。搭乗型ロボットのガンゲリオンがコンビニ街を跳躍する3DCG描写は今でも通用する。
VFX制作会社の自社作品は例外というなら、1998年の『映画 ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』はどうだろう。基本的にはキグルミ特撮だが、飛行戦艦から完全変形する巨大ロボットは3DCGらしい質感とはいえ見ごたえあった。
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先行するリアルな巨大ロボットVFXといえば、制作中断した大作映画の技術を流用して実景にパトレイバーを合成した『PATLABOR THE LIVE ACTION MOVIE』というショートフィルムも1998年に作られた。
こうした日本の作品群と比べて『Gセイバー』は、宇宙の人工都市では同じ形の樹木が無機質にならび、建造物の質感はCG丸出しで、モビルスーツの描写量も多くない。ここには実写ならではの感動がない。
宇宙コロニーの巨大鏡面上に遠心重力で立ったモビルスーツが剣戟する斬新な映像や、外装を部分パージして危機を脱する定番など、メカ演出では良いところも多いが、とにかくVFXリソースに余裕がないためか破壊シーン*1や巨大感ある構図が少ない。
せめてそれらしい実景にモビルスーツと俳優を合成するカットが複数あれば、怪獣映画的な楽しみができたと思うのだが……
ただ、海外スタッフで映像化したおかげで、照明と撮影は世界標準だったと思う。
先述のように宇宙基地はただの植物園でロケしただけだと思うが、大きくふったカメラワークで空間の高さや広さを感じさせつつ、俳優の位置関係などもわかりやすかった。
会話の切り返しのタイミングも悪くないし、たぶん充分ではないセットやエキストラなのに場面ごとに求められるスケールを感じさせるよう切りとっていた。
撮影監督のジョエル・ランサムで検索すると、大作戦争ドラマ『バンド・オブ・ブラザース』の撮影担当のひとりだったり、トビー・フーパー監督の『悪魔の起源 ジン』の撮影も担当したようだ。