法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『スイートプリキュア♪』第4話 モグモグ!奏が見せる気合いのレシピニャ

敵の陰謀で主人公が作らされたケーキが、現実のケーキ店でも存在しそうなデザインで、かなり驚いた。
たとえば黒ごまペーストを多く練りこんだクリームを使えば、かなり外見は正確に再現できるだろう。画像検索すると、マット質な表面のざらつき加減や色合いなど、かなり映像によく似たものが見つかるはず。実際に黒ごまペーストを使ったケーキを実際に作っているページも複数ある。実際にデザイン参考したケーキが存在するのかもしれない。
マーブルレアチーズケーキ | 幸せ探訪
http://cake.zakka-handm.com/26.html
こういう作中でも物珍しいデザインとして表現された食品を、アニメで相応に食品らしく見せることは難しい。作中人物が食べてもいない段階から、それらしく見える。他に登場した菓子類もわりあい現実感ある作画と演出で、崩れたケーキもクリームの柔らかさや粘性や弾性のなさが作画で表現できている。


製菓全般も、前回の音楽描写と比べて、きちんと取材しているし実感をもって描かれている*1。主人公の両親が語った菓子作りの要点も、奏の菓子を美味しくないと評した響の心情吐露も、理解しやすい簡潔な内容かつ具体性がある。
そもそも主人公2人の結びつきも、音楽より菓子で繋がっている描写がずっと多い。全くの想像にすぎないが、この作品はタイトルが流れた時に予想されていた通り、本来は菓子作りをモチーフにしたプリキュアで、現在の内容になったのは企画が進んだ後のスポンサー側の要求ではないか、とすら思ってしまった。


それはさておき、製菓描写にリアリティを感じたため、奏の感情の激しさが良くも悪くも浮き立っていた。
ケーキごとの区別をしない感想に怒っていたはずなのに、直後の場面で持っていた箱には響に食べさせるためのケーキが入っていたとか、無意識の内に響が好きだと語ったケーキを作ってしまうとか……素直になれない態度を強調しすぎてか、軽く病んでいる領域に入ってしまっている感すらあった。
しかし、そういう性格としてほぼ一貫して描かれ、人格にぶれがあるわけではない。素直すぎることで衝突を引き起こす響と好対照であることも確か。だから物語自体はまとまっていたと思う。問題は今回に描かれた激しい性格を、今後どう評価して*2、どう動かしていくかだろう。


コンテは東映作品では珍しく外部から山口祐司*3を呼んでいた。アクションは時間の短さもあってふるわなかったが、日常演出は良かったと思う。かつてサンライズ作品の演出家として活躍していたころを思うと、初回から今回まで続いているアクションの短さは各演出家の好みではなく、作品全体の方針と考えるべきか。
あと、敵の3馬鹿を、これまでのミュージカル風な言動を発展させ、その場面にあうBGMをアカペラで歌わせるメタギャグは虚をつかれて爆笑した。今後は敵にとって重要な場面だけでなく、プリキュアが活躍するような場面でも敵に塩を送るように勇壮なBGMを歌ったりしてほしいな。

*1:ボランティア的に参加しているイベント関係で、間接的に知る機会があるだけだが。

*2:一種の精神的依存ととらえれば、おそらく克服していく話になる。

*3:少女同士の強い思慕を描いたTVアニメ『ヤミと帽子の魔法使い』等を監督。一応、東映作品でも演出経験はある。