法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『スマイルプリキュア!』第32話 心を一つに!プリキュアの新たなる力!!

志田直俊コンテ。なまためやすひろ作画監督だが、今回は原画に小島彰や濱野裕一が入っていることもあって、アクションは存分に楽しむことができた。
高低差を使った殺陣の出来も良いし、洗脳が解ける場面で瞳のハイライトが回って輝きを取り戻す演出も面白い。
良くも悪くも映像と演出の力で押し切った回だった。


しかし、今回の脚本も米村正二なのだが、前回と全く同種の問題が発生していた。
『スマイルプリキュア!』第31話 ロイヤルクロックとキャンディの秘密!! - 法華狼の日記

敵の策略でプリキュアと引き離されたキャンディが、幻の世界で大量の菓子を与えられる場面でも、心底から幸福になれない理由は隣にプリキュアがいないためだ。

今回プリキュアがするべき説教は、物品だけあっても幸福になるとは限らないということ、友達とわかちあうことで幸福になれるということ。

今回は逆にキャンディが説教を担当。六つに別けたクッキーを示して、友達とわかちあう大切さを思い出させようとする。しかし、説教されている星空が座っているテーブルには、ちゃんと仲間も座っている。わざわざ一つの菓子を砕かなくても、多くの菓子を前に会話して、普通に友達と楽しんでいる風景だ。少なくとも、今回と前回とで、説教の内容だけでも交換するべきだ。
あるいは、せっかく幻の遊園地にいるのだから、四人の仲間はそれぞれ別々の遊具で楽しんで、テーブルで菓子を食べているのは星空一人だけという描写にしても良い。キャンディが星空に対してのみ説教すること、近くで同じ説教を聞きながら星空だけ洗脳が解けること、等々の不合理が回避できる。楽しむ遊具の種類でキャラクターの個性も描けただろう。
シリーズ構成自身が前回に続いて脚本を担当しているのに、今後の展開で必要な描写を無理やり入れたため浮いてしまったかのように、不調和が目立った。


あと、今回は作品全体の構図が逆転していたところが興味深い。バッドエンド側が幻のハッピーエンドを与えて、拒否したキュアハッピーが苦難の道を選ぶ。その苦難を象徴的に描くため、過去にプリキュアが失敗した姿を回想していたところは、それなりに効果的であった。
今回は他のバッドエンド住人も登場していないし、やはり物語全体ではジョーカーが黒幕となって、バッドエンドでもハッピーエンドでもない終わりなき日常を生きるという結論にいたるのだろうか。
ただし、幻のハッピーエンドをキュアハッピーが否定する流れが不自然。もともと不自然なまでにハッピーエンドしか語らないキャラクターなのだから、今回よりも前に自身のハッピーエンド願望を懐疑するエピソードを描くべきだろう。あるいは、今回こそハッピーエンドを懐疑するきっかけのエピソードとして自覚的に描写するべきだと思った。