法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

韓国における「親日派」の財産が没収された政策は、さほど意外な話でもないと思うのだが

韓国における「親日派」とは日本に対して友好的な人々という意味ではない。植民地時代に日本へおもねった人々のこと。Arisan氏もそれは理解しているはずだが、だからこそ説明不足と指摘しておきたい。
親日派問題について - Arisanのノート

別に韓国に限らず、世界でも日本でも、歴史上の不正(暴力)によって得られた富や「私有財産」の保有の権利は尊重されても、その財産が得られた際に他の人々から不当に奪い取られた財産については、奪われた人たちの権利やその被害の大きさが考慮されることなどないのが、今の社会の仕組みである。

なぜ、前者の「財産」や「権利」や「自由」だけが尊重され、後者のそれはまったく無視されるのか。

イギリスなどが「発見」して正当な権利として大英博物館に「展示」されている美術品に対し、エジプト政府が返還を求めたりしていることは、それなりに有名な話だと思っていたが。
ともかく、是正の動きが韓国だけではなく、世界中で普遍的に行われていることは注記するではないかと思う。

韓国における「親日派」への批判が、ほんとうに突き詰められるならば、それは植民地支配に発する富の不平等な蓄積の是正という目的を、やがては国家の枠さえも越えて目指していく動きとなるのではないだろうか?

韓国の場合、それは日本による植民地支配、そしてアメリカによる軍事的・政治的支配の歴史や現在と切り離せないものだ。何もないところに、「民主化されるべき」韓国の政治的現実(つまり軍事政権とかそういうことだが)が生まれたわけではないのである。

補足すると、親日派は太平洋戦争の終戦を境にして力を失ったわけではなく、韓国における長い軍事独裁政権時代にも統治者に近しい立場にあり、富の不平等な蓄積を続けていた。
親日派問題が植民地時代に端を発することは事実だが、半世紀以上前に終わった問題というわけではない。その意味でも、親日派財産没収は韓国民主化運動の一部として明確に位置づけることができる*1


ところで、この政策で韓国を批判している人に、日本を占領したGHQが行った政策を忘れている人はいないだろうか。
不平等社会であった日本に対して、富を蓄積し続けて政治を動かした財閥をGHQは解体し、労働対価を簒奪されていた小作人へ農地を解放した。親日派財産没収を批判する人は、今以上に財閥が力を持って小作人が困窮する日本社会を求めているのだろうか。そうではあるまい。
ちなみに実は私も、農地解放以前に大地主だった親類を持つ。韓国の親日派財産没収を批判している人は、私に同情するだろうが。だがその同情を私は断固として拒絶する。

*1:民主化運動の一部だから絶対に間違いではない、という話ではない。念のため。