法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ジャイアンに苦手を作れ/出木杉にも苦手を作れ

今回は同じ秘密道具をABパートで全く異なるスタッフが担当するという、面白い趣向だった。
原作は「苦手つくり機」として存在するが、恐怖を感じる対象が細かく設定できるという違いはあるものの「○□恐怖症」と似た内容。そのためか作者生前には単行本未収録で、ずっと後に『ドラえもん+』へ収録された。


Aパートは誌村宏明コンテ。動画工房回なのでよく動く。それでいて恐怖を感じる対象は止め絵で書き込むという、対照的な演出が巧い。普段がシンプルな描線で作画されているから、少し線を書き込むだけで見ている側もゲシュタルト崩壊しそうになり、どこか恐怖を感じさせる。
好きな同級生の女子にクレープをふるまわれたり、着替えた衣装を見せられたりする、それなんてギャルゲーな幸運が反転して、凶事となってしまう構成もよくできたギャグだ。しかし、この扇情的な衣装デザインは許されるのだろうか、色々な意味で。バザーに使う「ドレス」と作中で説明されていたが、ピンク色のヘソ出しミニスカートにキャップつきというデザインは、どちらかというとウェイトレスのコスチュームに見えるぞ。
ともあれ、いつものオチもさりげなく、階段を使ってキャラクターの関係性変化を演出するコンテもすばらしく、最後まで楽しむことができた。


Bパートはベガエンタテイメント回。出木杉*1が、のび太の逆恨みと八つ当たりで恐怖を味わうはめとなる。こちらの恐怖感の演出は、おどろおどろしい幻覚を見るというありきたりな描写で、Aパートと比べて安易かな。
しかし、やはり出木杉は出来すぎだったという結末は原作通りのキャラクター性で納得できる。原作を無視して見ても、冒頭に秘密道具の使用目的として苦手克服という例をドラえもんが語っており、出木杉が対処できても不自然ではないように脚本構成されている。のび太がテストで5点獲得できる理由を言葉で説明せず、物語の流れに自然な伏線をはっているところも素晴らしい。
野球で勝利した後、ジャイアンの母が子供達にジュースをふるまう場面も、アニメ独特でいて不自然さを感じさせず、いい描写だったと思う。

*1:ちなみに今回のアニメでは「英才」の読みが独白にて「ひでとし」と描写されている。他に「えいさい」の読みがあったり、「太郎」の表記が用いられたこともある。