法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』デビルカード/みたままベレーで天才画家

「デビルカード」は、どうしても300円がほしいのび太が、ドラえもんの隠していた魔法陣をつかって意図せず悪魔を呼びだしてしまう。悪魔は身長1mmごとに300円を出すカードをくれて……
 展開のパターンが完成した中期原作を、2006年のアニメ化以来のリメイク。寺本幸代コンテ演出で、ベガエンタテイメントが制作協力。
 寺本回らしく映像に力が入っていて、のび太の悪夢で、サイズが小さくなる主観映像で部屋が相対的に大きくなるのを緻密な背景動画で表現したカットが目をひいた。その後に服だけが残ったカットから、のび太が原作と同じように着がえているカットにつないだ小技も印象的。余った袖を折りかえしている地味な描写もリアリティをあげている。
 物語も原作通りに、デビットカードのダジャレのような悪魔のアイテムで少しずつ追いこまれていく恐怖をていねいにアニメ化していた。身長2mすべてつかっても60万円にしかならないのでは子供にしかつうじないだろうな、と歳をとるごとに実感する。
 しかし『宇宙小戦争』のリメイク映画*1が公開された直後にこの原作を選んだのはなぜだろうか。どんなものにも効果の期限があるとドラえもんが語り、特にスモールライトでポイントとなる映画だ。ビッグライトによる巨大化が永続的ということを前提した「デビルカード」との矛盾を指摘されがちなだけに、よりによって今アニメ化するのは逆に話題になることをねらったのかどうか……


「みたままベレーで天才画家」は、自主的なスケッチ大会で出木杉の絵が絶賛される一方、ラクガキのような絵しか描けないのび太はおちこんでしまい、秘密道具にたよろうとするが……
 やや後期の原作を、2005年リニューアル以降で初アニメ化。高柳哲司コンテに岩永大蔵作画監督で、多数のゲストキャラクターが登場しつつ作画が整っている。
 秘密道具は「見たまま」といっても、記憶にある情景というより過去にたちあった思い出したい情景*2を写真のように正確に描く道具。なので認識できていない過去の情景から手がかりを見つけられる。
 秘密道具をつかって描いた絵が液晶モニターのように細かいドットが見えることが、写真と解釈されて絵ではないと笑われるオチの説得力を地味に足している。
 アニメオリジナル展開として、カバンをもっている男が何をさがしているのか語らせず、怪しく印象づけることで、サスペンス性を高めて捜査パートも長くしたアレンジも良かった。
 しかしアニメオリジナルでアイドルの姿を楽しむため1秒ごとの絵を描かせる無茶ぶりギャグを見ると、人間にやらせるべきことではないと思うわけだが、それがアニメーターの仕事ではある。その描写があっただけに、犬に10秒きざみで犯行現場の絵を描かせるのもかわいそうだと思ってしまった。最初は5分きざみくらいにして、カバンがなくなった時間帯を少しずつしぼりこんでいくべきだったのでは。

*1:hokke-ookami.hatenablog.com

*2:のび助の夢を描かせると自分自身の喜ぶ姿が描かれるので主観視点とはかぎらない。さがしている交番を描いた描写もあるので、想定している情景を描かせる機能もあるようだが。