法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』そのときどこにいた/シャラガム

 今回は前後とも原作者没後の単行本プラス第3巻に収録し、ベガエンタテイメント制作版の『バビル2世』で監督をつとめた牛草健が演出として初参加。


「そのときどこにいた」は、のび太が部屋からボールをもって飛び出たところ、階段下にボールを落として居間をメチャクチャにしてしまう。秘密道具で状態を回復することはできたが……
 2005年リニューアル以降で初アニメ化。1989年版でコンテ演出を担当したパクキョンスンが今回もコンテを担当。珍しいことに作画監督も原画も外国人らしきスタッフ名がならぶ。
 しかし描きなれないためか絵柄こそ不安定だが、よく動かしていてアニメーションとしては悪くない。物品や人間が時間を逆戻りするように動く映像のプリミティブな楽しみと、戻ったところに止まり木がないため空中で静止するカナリアのようなシュールな映像の面白味がある。
 パクキョンスンコンテらしく過程を省略しないことで、書類をなくした父親の足取りを秘密道具をつかった手がかりで推理していく流れも楽しい。単純に時間をもどすだけではなく、サブタイトルどおりの謎解き趣味が味わえた。


「シャラガム」は、ドラえもんの将棋や母親のおやつのさそいにのび太が乗らず、一心不乱に勉強しようとする。年に数回ある発作だと思って、ドラえもんと母親はいつまでつづくかと笑いあうが……
 こちらも記憶では2005年リニューアル以降で初アニメ化。こちらも作画は不安定だが、葛藤したりガムシャラに進むのび太をしっかり動かし、物語の説得力を映像で増していた。
 ジャイアンが歌を聞かせるだけの原作をアレンジして、野球の誘惑と野球中止の怒りという物語にそって異なる障害に設定したことも良かった。ジャイアンが待ちうけている裏道が階段を少しのぼらない描写も、のび太があえて立ちむかうドラマのメタファーとして効果的だ。
 そして結末で明かされる真相は珍しくないパターンだが、本気で驚いてしまった。このような導入と結末のあるエピソードがあることは記憶していたのに、このエピソードだということを失念していた。