法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ハートキャッチプリキュア!』第6話 スクープ!プリキュアの正体ばれちゃいます!?

ところで、『ハートキャッチプリキュア!』に期待をしている大きなお友達へ、残念なおしらせがありますお - 法華狼の日記で紹介した勝間田具治演出回。期待しすぎないよう注意しながら見てみた。
「おしりパンチ!」……そうか、「おい、これパンツ見えてもいいだろ」と提案して柔らかく拒否された場面はここか!


真面目な話、大塚隆史twitterによると長峯シリーズディレクターが相当に手を入れているらしいので、どこまで勝間田演出の個性が残っているかは判別困難。クライマックス戦の、説明的なカットを抜いて状況が判別しにくい点は長峯演出らしい。つまりは師匠の山内重保演出らしい。一方で、バレーボールのレシーブに似た形から振り下ろして敵を殴るカットは、昔の勝間田演出で見かけた気もするが、これも『ドラゴンボール』の山内演出を思わせる……
作画についても、河野宏之作画監督らしく今作では初めて癖が目立つ回で、原画もいつもの3人体制。しかし、生徒会長が武道で見せる人体の流麗な動きは馬越嘉彦が修正を入れているような……
……確定情報がない中でスタッフ名だけ注目してもしかたがないので、個別に良かった点をあげると、前述した武道の作画は殺陣もていねいで目を引いた。本編のアクション演出はアイテム説明描写に徹していたので、特別な良さは感じなかったものの、細かいデフォルメ表情をはさんで楽しい内容にはなっていた。
また、多田かなえが大階段に座り込むカットが、地味に地デジ対応な細かい作画で、俯瞰のロングショットを破綻させず孤独な心情をよく表していたな。全体的に、戦闘より日常のやりとりが印象に残る回だった。


さて、今回の脚本は伊藤睦美。物語本筋は、自身の写真が被写体に拒否されることを悩むカメラマン少女、多田の目を通して描かれる。
プリキュアの正体が探されるという定型サスペンスと同時に、プリキュアが社会からどのように見られているかという世界観を提示する展開がうまい。さらに以前のゲストキャラクターもインタビュー対象として再登場し、作中世界を補強しつつゲストキャラクターの後日談をにおわせる。
そして多田が憧れる対象として、初登場のキュアマリン父も表面の明るさから一流カメラマンらしい信念まで表現*1。悩みが頂点に達したところで敵に利用され、プリキュアに助けられる。構図として主人公2人が救いつつ、内面の問題へ物理的に踏み込まないという距離感が好ましく感じる。本当に難しい問題は、あまり直接的な説教で納得してほしくないのだ。実は前後して尊敬する一流カメラマンが長台詞で説教しているが、コメディチックに処理していたし、敵の登場で流れをいったん断ったことで説教臭さを薄めていた。
一つ一つの描写に複数の意味がこめられ、定石的な展開ではあるが密度が濃い。主人公2人の日常写真を写す多田の、今話の結論であると同時にシリーズ全体のテーマへ繋がる、たった一言の台詞「やっぱ愛よね」とともに幕を引くのもシャレている。


今回も充分に満足できる内容だった。個々のキャラクターもよく立っているし、あとは初回冒頭の戦闘と、敵の最終目的をいつどのように回収し提示するかだけが問題かな。

*1:被写体に喜ばれる写真を求める信念は、モデル撮影専門のカメラマンらしい考えであり、やや扇情的ジャーナリスティックな多田とは最初から方向性が違う、という考えもできる。ここは実は踏み込むと難しい問題なのだが、うまく子供向けにかわされてしまったかな。