サブタイトルのとおり、パーティーを開こうとしたところで食材が足りず、キュアプリンセスとキュアフォーチュンが買出しに出かける。
そういうタイトルの番組のように買い物がうまくいかない展開かと予想していたが、どちらも買い物が下手というわけではない。だからこそ、どのような買い物をするかの違いで、ふたりの性格と生活を自然とうかがわせる。少しでも安く買おうと奮闘するキュアフォーチュンは、キュアムーンライトに対するファンの想像を実現したかのよう。
しかしコメディタッチで描かれているので楽しめて、ちゃんと子供向け教育の側面も持っている。
演出は三塚雅人で、作画監督が上野ケン。原画に板岡錦。映像リソースの活用という意味では今作で一番かもしれない。どうしても設定説明などにリソースをそそがざるをえない長峯達也SD演出回よりも余裕が感じられ、アクションアニメとして満足した。
さすがにドラマパートは動きが抑え目だが、静止画ばかりという印象はない。ふたりが距離をちぢめていこうとする緊張感をクローズアップの連続で演出する。ギャグっぽく描線の質を変えたり、リピート作画したりと、普段は見ない表現が多いのも特徴。
そして後半、キュアプリンセスとキュアフォーチュンが共闘する。まず、ひとりだけしっかり変身バンクを入れたキュアフォーチュンが戦っているところ、キュアプリンセスが変身バンクと同じポーズをとりながら参加する。バンクで映像の流れを止めず、スムーズに共闘に移行できる。
さらに爆発エフェクト作画や集団戦で楽しませつつ、2種類のサイアークを組み合わせた攻撃がはじまり、プリキュアが翻弄される。小型サイアークの高速移動がちゃんとそれらしくアニメートされているし、気をとられると大型サイアークが攻撃してくるというカット割りの呼吸も良い。『プリキュア』シリーズで、ちゃんと作戦に映像としての説得力があるのは珍しい。背景美術もがんばっていて、近景と遠景で空間の広がりが表現され、敵味方の位置も混乱しない。
オチとして、バンクを使わずに変身と同じポーズをとらせることで、戦闘に参加しなかった残りのプリキュアにも意味を持たせる。
10周年挨拶はキュアブルーム。やはり本編の作画がいまいちだった作品ほど、特別に美麗な作画を楽しめる。良いのか悪いのか。