ジャンプ+で2018年から、WEB漫画としては相当に長期連載をつづけている作品をMAPPAでアニメ化。2024年4月から1クールで放送され、11月に2期の制作決定が報じられた。
原作は未読だったが、無料公開されていたのでTVアニメ視聴後に映像化された範囲だけいくつか読んだ。台詞などの言葉選びは原作に良さがあるが、アシスタントが少ないのかWEBで見ることを想定してか背景は簡素で、情景をおぎなうことでTVアニメ独自の良さが出ている。
スタッフを見ると、『メジャー』から野球アニメ御用達の立中順平*1が、今作でもアクション作画監督から各話コンテ原画までガッツリかかわっている。
しかし第1話アバンタイトルの土煙作画などを見ると、全編がモダンな作画アニメのスタイルでつくられた初めての野球アニメかもしれないという驚きがあった。
この作画スタイルを『球詠』*2に期待していたが、そちらはあまりにも映像の制作リソースが不足していた。
物語は良くも悪くもパロディまみれで、ギャグのつまらなさは驚くほどだが、シリアスな回はきっちりしめている。
圧倒的な選手が記憶喪失から再起する設定は水球アニメ『RE-MAIN』*3に先行するが、こちらは意識的に二次元のような出来事としてコメディチックに処理。しかし選手として圧倒した過去はついてまわるし、圧倒された選手の蹉跌は個別に深掘りされていく。
野球作品らしく下ネタまみれでホモソーシャルな関係が強めだが、いったんマチズモの鼻柱が折られた選手たちがあつまって主人公チームがつくられたという構造で緩和。軍隊のような規律が才能をとりこぼしてきた野球界の問題にもふれている。
なかでも白眉の回はやはり第11話だろう。フィジカルに劣る若者の蹉跌と、それでも野球に向きあうすべての人に敬意をはらう高潔さ。3DCGを活用した立体的なカメラワークに、人間の躍動感を抽出して写したアニメーション。この作品の特色たる下の光源で照らされる表情。
単発の物語として見ても四文字の言葉にまつわる悔恨の真意が良かったし、先述の第1話アバンタイトルで目を引いたカットを過去の転換点にもってきたり第10話の予告映像で描かれた情景の意味がクライマックスで判明する作品全体のギミックもうまかった。
コンテ演出を担当した徳丸昌大*4は作品全体のアクション作画監督も立中順平と共同でつとめ、先述の第1話アバンタイトルの該当カットも手がけている。すでにいくつかの作品で注目されてきたアニメーターだが、あらためて松本憲生が注目*5しているだけはある。