法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『パーティーから追放されたその治癒師、実は最強につき』雑多な感想

 2024年10月からANiMAZiNG!!!枠で放送された異世界ファンタジー。いかにもこの枠らしい安っぽい、すでに映像化の流行にも乗りおくれた既視感あふれる追放物だろうと予想していたが……

 意外なことに第1話がていねいにつくられていた。リソースが足りなそうなところをうまくデザイン的な情景処理で省力し、シンプルなダンジョン内で男女ふたりパーティーが探索するので必要なリソースも少なく、うまく格闘少女のアクションにリソースを注ぎこんで動かせていた。
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 以降も第4話まではタイトルの「最強」に反して主人公が意外と強くないところに個性があった。たしかに強力な魔獣に傷をつけられる力はあっても同種の作品にくらべると突出した強さとは感じられない。一般的な知識をもつ別の治癒師が登場してから少しは印象が変化するが、やはり能力が一面で不足しているかわりに他面で突出しているだけで総合的には水準より少し強いくらいにとどまる。第4話で暴走した時に異常な強さを発揮する古臭いパターンと明らかになったが、主人公自身がコントロールできてはいないので、まだまだ長所も短所もある作品世界で一般的な強さの冒険者がささえあうドラマとして成立している。
 第7話などは大の男ふたりとも朴念仁すぎて女性陣がやきもきしたり、けっこうラブコメとしても楽しかったり。序盤のふたりパーティーのままでも良かったが、パーティー人数が増えてもけっこう各キャラクターを物語でも映像でも動かしつづけて、表情もくるくる漫画チックに変わるので見ていて飽きない。伏線らしき描写を人形劇で表現したり、小技もきいている。その人形をちゃんと糸であやつっているようにアニメーションしているところも感心した。
 原作もコミカライズも未読だが、かなりアニメ独自のアレンジや新設定を追加しているらしく、おかげで1クール作品でそれなりに話がまとまっている。集団のなかで負担を背負う個人という主人公の立場がヒロインに移り、最終決戦では世界全体に拡張されて、作品のテーマとして強固にしていったシリーズ構成にも感心した。


 初期パーティーの人身売買を考えていた男女への対応が甘すぎたり、ところどころ主人公の言動に違和感がないでもないが、少ない資源や足りない技術のなかでせいいっぱいがんばって楽しいTVアニメを作ろうとしていると思える。
 残念ながら話数を重ねるにつれて予算不足が画面にあらわれるようになり、暴走主人公や目が綺麗なエルフ老人などビジュアルデザインから難を感じるところが多くなっていったが、まあまあ愛せるTVアニメにはなっていた。