法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

特別永住者について一つだけ思い出したこと

ここのところ地方参政権論議を読んでいて、在日韓国人在日朝鮮人に対して、日本への帰化か「本国」への帰還という二者択一をせまる意見を目にすることが多かった。
しかし、特別永住権を持つ多くの在日韓国人在日朝鮮人にとって、基本的に母国は日本だ。そして彼らが心情的によりそう対象が日本でなく「韓国」や「北朝鮮」であっても、それらは現実に存在する国家としての韓国や北朝鮮と同一とは限らない。
組織や団体に所属することで「本国」と繋がっているという意識を持とうとも、それは組織を通した虚構といえる。組織の理想的な言葉で粉飾された国家像を思い浮かべるなら、それこそ現実と異なった仮想世界にある「韓国」であり「北朝鮮」だ。
たいていの人が知っているはずだ。国家を持たない民族が「本国」*1を取り戻す日を願い続け、ついに「帰国」を果たした後、その地域がどのようなありさまになっているかを。


ここでふと、隠れキリシタンの歴史を思い出す。
彼らは長い江戸時代にも隠れ続け、信仰を守り育て続けた。そして江戸幕府が倒れ、鎖国が解け、キリスト教を堂々と信仰できるようになった時、すでに隠れキリシタンは全く異質な宗教へ進化していた。本来は同じ宗教でありながら、再び海外から流入したキリスト教とは、対立する存在となっていたのだ。
弾圧する江戸幕府が消えたことは、必ずしも隠れキリシタンの救いにはならなかった。


隠れキリシタンの話はさておいても、複雑な状態となったことが歴史となり文化となっている状況で、かつての複雑さを生んだ原因だけ解消しようとも、簡単に問題が解決すると思うべきではない。
本来は、わざわざ明文化するまでもない。ありふれた歴史の教訓だ。

*1:あまり正確な表現ではないが、仮に他の文章と言葉をそろえた。