タブロイド学者の三浦氏*1が、ツイッターで警察白書とともに、迫撃砲発見の逸話を引いていた。
すでにリプライで懐疑され、下記エントリのような検証も提示されているように、これは現在のところ中西輝政氏のつたえる「噂話」しか存在しない。
コピペ探訪〜阪神大震災コピペの謎を追え(3) - 小久保せまきのはてな分室
これは2004年2月10日に発行された保守系批評誌「Voice」3月号(PHP出版)の京都大教授中西輝政氏の連載「日本の国防力が目覚めるとき 第15回 国家としての日本を考える(121P〜122P)」が出典である。
さて、中西氏がどれほど信頼をもてる論者か。
たとえば陰謀論的な論文を公表したことで自衛隊幕僚を辞めた田母神俊雄氏を応援して、自身も張作霖暗殺陰謀論を語っていた。
張作霖爆殺事件3
さらに以前には、真珠湾攻撃をルーズベルトが知っていて泳がせているといった陰謀論に賛同して、秦郁彦氏らに批判された。
スティネット「真珠湾の真実」をめぐって 中西輝政−秦郁彦論争を中心に 日米開戦「ルーズベルトの陰謀」
つまり「皆さんが納得するレベル」どころか、保守派ですら切断処理せざるをえない陰謀論者の、あやふやな伝聞証言だった。そしてその内容はというと、まさに社会の不安と分断を煽るものだった。
そもそも「スパイ」がいることまでは信頼できる情報があるとして*2、それが三浦氏のような社会扇動を肯定するものとは限らない。
たとえば2016年の聯合ニュースで、工作員に指示を送るための乱数放送が十数年ぶりに観測されたという報道がそれだ。
スパイに指令? 16年ぶりに「乱数放送」再開=北朝鮮
伝えられている出来事は、三浦氏が「韓国の情報源に基づく英国の記事」と紹介したタブロイド記事と同じだが、分析を読むとニュアンスの違いがはっきりする。
ユ院長は、乱数放送は大きく三つに分けられるとしながら、「一つ目は実際にスパイに指令を出すもの。二つ目は韓国の情報当局を混乱させるために虚偽の内容を放送するもの。三つ目はスパイの定期訓練のために放送するもの」と説明。その上で、「北が乱数放送を再開したのは、韓国に対する工作活動を再開したというメッセージを韓国当局に送ることで、南北間の緊張を高める狙いがあるとみられる」と指摘した。
ただ、乱数放送はデジタル時代になった今ではほとんど使われないアナログ方式で、北朝鮮の対韓国心理戦の一環だとする見方もある。
つまり隣人が一斉蜂起する恐怖を煽った三浦氏は、この記事の分析にしたがえば、むしろ敵の術中にはまっていることになる。
*1:はてなアカウントはid:LMIURA。「タブロイド学者」についてはこちらを参照。「在日コリアンがテロリストだなんて言っていません」「OK、グーグル。北朝鮮と同一民族ならスリーパー・セルが隠れやすいと言った学者は誰だ」 - 法華狼の日記
*2:『ワイドナショー』での三浦瑠麗氏が、スパイではなくテロリストの存在を断言したことが理解できない - 法華狼の日記のような文章を書いた私をはじめ、三浦氏の批判者は必ずしもスパイの実在性を疑ってはいない。