法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『機動戦士ガンダム00』セカンドシーズン#21 革新の扉

前回の省略された戦闘を見せてくれたのは良かった。不意打ちながら、たった一撃で撃墜されたイノベイターは、もはや意図的にお笑い担当にしていると解釈していいだろう*1。二段回の攻撃で防御を破った工夫も面白い。
後半も、ルイスとネーナの戦闘では兵器のサイズ差、刹那とグラハムの戦闘では建造物を利用し、それぞれ距離感や巨大感が出ている。特に刹那とグラハムの戦闘が、建造物に着地して破片を撒き散らせたりして、単調となりがちな宇宙空間戦闘に変化をつけていて飽きない。おそらく今回が最後となるうえだしげるコンテ演出回では、最も良かった。


物語本筋では、前回から一転して名前あるキャラクターが次々に消えていく。
今回だけで“実は生きていたが死にそうになる”展開をくりかえす王留美は、キャラクター自体が死んでいるようなもの。ふりかえってみると情報を媒介するだけの存在にすぎず、特段に名前のある意味はなかった。ただし、今回に見せた空虚な内面を知ってから、一期初回以降を思い返すと、全く異なった見え方ができるのは楽しい*2
王留美を殺したネーナも、環境のため戦いに身を投じざるをえなかった存在だ。こちらも随分あっさり殺されたものだが、しばらく出番のなかったアリーの存在を示唆したのは小技が効いていた。そろそろ再登場するだろうと予想していた視聴者ほど引っかかる。
さらにネーナを殺したルイスもまた、環境のため戦いに身を投じざるをえなかった存在だ。ここで、王留美、ネーナ、ルイスの順に選択肢がせばまっていることが、面白い構図を作っている。似た者同士で殺し合う喜劇と、悲劇のヒロインを気取る者をさらに悲惨な存在が殺す皮肉。
経緯を省略してまで死が熱く扱われていた前回と、状況の一要素として死を冷たく扱う今回では、さすがに温度差を感じたものの、敵味方を問わず登場人物全て追い込んでいく流れは悪くなかったと思う。


今シリーズ全体が掲げている主題「変革」「革新」については、「ニュータイプ」を思い出させるSF設定で寓話的に処理していく様子だが、ずっと段階を踏んで説明しており、相応にまとまってくれそうだ。

*1:イノベイター達が、自分達に勝利したのだから敵も特別な存在だろうと推測する場面で、『装甲騎兵ボトムズ』で「異能生存体」な主人公に敗北した「パーフェクトソルジャー」イプシロンの台詞を思い出した。前回の感想で異能生存体に言及した時は、あくまで冗談半分だったのだが、意外と本当に影響を受けているのかもしれない。

*2:脚本家の底意地が悪いだけ、とも感じるが。