法華狼の日記

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『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』#3 散華

前回の戦闘で、上層部に対する少年兵の不信感が決定的となった。そこで少年兵は反乱を起こし、反抗的な大人を粛正する。
そして少年兵はこれからどうするか悩み、クーデリアの処遇に注目が集まる。そんなところに敵軍のひとりがモビルスーツによる決闘をもうしこんできた……


大張正己がメカ作画監督で、連名でコンテも担当。巨大ロボットによる決闘を、このスタッフらしく華々しく映像化しつつ、それが浮ついたものだと位置づけた。
少年兵との戦闘を忌避する軍人を、短い出番で魅力的に描くなら、むしろ平凡に描写してほしいところ。ゼント二尉というキャラクターに固有の魅力は感じられなかった。おそらく制作者は、典型的なエピソード*1を序盤で早めに処理するためと、そうした大人の思いいれを忌避する少年を描くために、ここで決闘させたのだろう。
さらに決闘の後で少年兵が組織の名前を「鉄華団」と名づける。サブタイトルの意味を反転させ、大人が戦死を美化することへ反逆するように。


今回に独自性を感じたのは、主人公が無表情で大人を殺していく描写。
もちろん過去シリーズでも、最初から兵士という立場で迷わず戦う主人公がいたし、敵を殺して哄笑する主人公まで存在した。今作が珍しいのは、その場で指示されるまま殺しているところ。しかも指示しているのは、味方であれ敵軍であれ、主人公より年長に見える。
おかげで集団で動くしかない少年兵の漂流劇らしくなったし、思いいれを拒否する子供が主体的に動けない逆説もおもしろい。きちんと昇華できるならば、この独自性が作品固有の魅力になるだろう。


残念なのは、設定から遠くはなれたクーデリアの言動。ほとんど知恵をはたらかせる場面がなく*2、報道で知ることができそうな社会問題も知らず、説得力ある発言や演説もおこなわない。
独立運動のカリスマになるだけの説得力を描かないまま、カリスマ性に欠けた実態をあばかれても、キャラクターが成立していないと感じるだけ。せめて序盤はカリスマとして選ばれた説得的な経緯を描いて、そこからキャラクターを崩していってほしい。

*1:シリーズ初代の『機動戦士ガンダム』の、ランバ・ラル大尉の戦死が代表。

*2:第2話の推理はおもしろいと思ったのだが。『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』#2 バルバトス - 法華狼の日記