屋上にて2人の引いた構図……しかも人物は逆光でつぶれ、青空に斜めに伸びる特徴的な飛行機雲……は細田守演出へのオマージュか。バンクで同じ場面を使い回しながら、少しずつ人物の言動を変えていく演出も、それらしい。
物語に必要なキャラクターのみを前面に出す脚本も細田守作品を思わせる。
大塚隆史演出による、期待通りの力作。販促を超えた演出家の偏愛を感じるほど、うららの描写に力が入っている。日常芝居からアクションまで作画枚数をたっぷり使い、キャラクターの魅力を存分に引き出していた。
物語も第4話*1を受けるように、若い登場人物の中では数少なく仕事をしている2人……夢を超えて社会で働いている、うららとシロップを中心とした物語*2。他のキャラクターは周囲から支えるだけで、プリキュアへの変身もうらら以外は全員が省略されている。必要な描写だけを盛り込んだ無駄のない作りで、時間いっぱいに密度あるドラマを楽しめた。冒頭の飛行を結末の乗車券で受け、夕空から始まった物語を夕空でていねいに閉じているのも好印象だ。
ただ、CDやアクセサリーの販促をかねた回と考慮しても、1キャラクターの描写に偏っていることは、少しやりすぎな感もある。うらら以外のレギュラーには美味しい場面を持っていかせ、細かいサブレギュラーまで登場させているように、けして他のキャラクターを粗末に扱っているわけではない。しかし別キャラクターに思い入れがあるファンから見たら、あまり良い気分ではないかもしれない。
作画監督は飯飼一幸が担当。原画は田中宏紀やTAPスタッフといった良作画回を担当することが多い布陣。第4話ではクライマックスが素晴らしい分だけ作画の不統一が目立ったが、今回は格闘戦のみならず日常芝居まで神経が行き届いている。
なびき続けるうららのツインテール*3、歩き出しからポーズを取る時まで体重移動を忘れない作画、フォルムを強調して背景動画も多用したネバタコスとの格闘戦*4、モブシーンまで通常よりていねいに描きこんでおり、どのカットも作画的に見所がある。
演出でも止め絵や使い回し*5を活用し、作画リソースを節約していた。引いた構図で人物を逆光に処理する演出も、もともと東映演出家であった細田守が作画節約として好んでいたもの。人物を描き込まず動かさず省力しつつ、撮影や美術の力で情感のある場面を演出できる手法だ。