法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

魔女を狩り立てる人々

〜「傲慢なアメリカ国民は……黒人に自分の靴を磨かせ、次に彼が靴磨きだという事実によって黒人の劣等性を証明する」バーナードショー〜
ある属性を勝手に付与し、次にその属性を根拠に批難をあびせる。安田好弘弁護士が今あびせられている批難だ。一度も裁判において死刑制度廃止を主張していないのに*1死刑廃止運動を弁護活動で展開しているとされている。


弁護団は事件(被告)を利用しているのか?

死刑廃止の運動自体は結構なんですけど」と前置きをしながらなお、「この事件を死刑廃止のために利用してるんじゃないか」と語る人々を連日のように見かける。

上記で紹介されているように、死刑廃止運動は否定しないが、弁護活動より優先しているから、被告の権利を害しているから批判しているのだ、という論理も見る。しかし、この意見は実際の弁護方針を無視した憶測*2にすぎない。
弁護団は証言や証拠の食い違いから殺意がなかったと推測し、被告が当初に行っていた証言にかなりそった主張をしている*3。教科書的な弁護活動であって、全く批難されるいわれのないものだ。


さて、これが一歩進むと、ある属性を勝手に付与し、次にその属性とそぐわないからと批難をあびせるようになる。
活字中毒R。

 僕個人としては、このパトリック・アンリという男のやったことは、死刑に値すると思うのですが、少なくとも、このボキヨン弁護士の真摯な姿勢には、「死刑制度」について、僕自身もあらためて考えさせられたのも事実です。こういうのが「フランス的」というか「劇場的」なのかもしれませんけど。
 しかし、こうして比べてみると、あの安田弁護士っていうのは、本当に「死刑廃止論者」なんですかねえ……正直、あの人の言動を観ていると、死刑廃止論者すら、「やっぱり死刑制度は必要なのかも……」と思い直してしまうのではないかなあ。まさか、死刑制度存続のために送り込まれたスパイ?

法廷における死刑反対運動自体は許容できるが、安田弁護士の手法は稚拙であるという論理だ*4
だが先に説明したように、安田弁護士は最初から死刑反対運動など裁判の場で行っていない。


安田弁護士の弁論が、死刑反対運動に見えれば裁判を利用していると批難し、死刑反対運動に見えなければ裁判を運動に利用しつつ自身の理想にも失礼だとする。どのような弁護を行っても批難をあびせられるというわけだ。
中世の魔女狩りでは、水に放り込んで浮かべば魔女として死刑、沈んで溺死すれば無罪という裁判が行われたという。


なお、靴磨きや弁護活動が劣等の証明になるような思考自体も、もちろん批判されるべきだ。

*1:一例として、TBS系正午のワイドショー『ピンポン』で元検事の弁護士が弁護団の意図について「おそらく」と枕詞をおいて語っていた。つまり、死刑制度廃止運動しているという考えは憶測の域を出ていないというわけだ。

*2:報道やネットの情報ですりこまれた可能性が高いだろう

*3:http://d.hatena.ne.jp/good2nd/20070703/1183474850

*4:ただし書かれてから時間が経った現在、書き手の意見が異なっている可能性はあり、個別に批判するつもりはない。