法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

誰がバカなのか何がバカなのか

ちくわ氏への本格的な返答や反論は後日にして、まず2007年9月3日の、懲戒請求扇動に対して橋下徹弁護士が訴えられたことへの見解を引く。
http://www.tikuwa.com/sc/2007/09.html*1

 それこそがオレの云わんとする主眼であり、もう一つの問題点であり、今回の件に関する総括とも云えるオレの見解。
 要するに、現行法では死刑は適法であり、二人以上の殺害は死刑の適用範囲であり、かつ少年法の改正により18歳以上なら死刑が課せられる可能性もあるし、例え加害者に精神的障害があっても、その事件が残虐非道で社会的影響が大きな場合、それは避けられない。故に、今回の加害者が“死刑になる”という手続き自体はその条件を全て満たしていて、何も問題がないワケだ。
 という事はつまり、死刑廃止論という主張から、ボランティアで弁護団を組んでまで、すでに司法的に決着のついていた問題を蒸し返し、混ぜっ返し、審議の速やかな決着を妨害をしているのは安田率いる珍権家弁護団であって、それは死刑廃止論などという主観でもって歪めていいものじゃないワケ。

弁護団として死刑廃止運動しているという情報が誤りとわかれば「オレの云わんとする主眼」「今回の件に関する総括とも云えるオレの見解」は何の価値もなかったとわかるだろう。
「主眼」や「総括」とまで称した主張の根拠が誤認とわかったのだから、見解のかなりが根底から崩れたことは、認めざるをえないと思う。


もちろん、これは「後出し」の批判ではない。死刑回避主張と死刑廃止論の違いを知っていれば、ちくわ氏の主張が誤っていたことは当時から素人でも理解できた*2
まず『たかじんのそこまで言って委員会』が事実誤認を事実上認めたのは先月だが、死刑廃止運動のために法廷を利用していないという安田好弘弁護士の主張は先に示したように二年近く前から報じられている*3。対して、死刑廃止運動に裁判を利用しているという報道が、明確な根拠を示していたことはなかった。
そもそも、全ての法律は憲法を土台とする。憲法で残虐な刑を禁止していることを根拠にして、死刑制度が憲法違反と主張する弁護は珍しくない。国内の裁判で受け入れられたことはないが、米国でよく似た主張から裁判が起こされたため、つい最近まで死刑執行が停止していた例がある。だから法廷で死刑の違憲性を訴えても、もちろん懲戒事由にはならない*4


さて、一年近く前の誤りにすぎないという反応をされるかもしれない。だが、そもそも問題にしているのは「オレの見解」ではない。その見解を導かせた、報道を問題にしているのだ。
先の批判*5も『たかじんのそこまで言って委員会』と視聴者が誤情報を広げる関係性が主であって、ちくわ氏の記述は傾向の一例としてあげたにすぎない。もしも自分が特筆して言及されるほど特別な存在だと思っているなら、自意識過剰というものだ。
弁護団は法廷で死刑廃止運動を展開していないという正確な報道が当時から広まっていれば……別の誤認情報が大きく取り上げられるとしても……弁護団批判は別の形になっただろう。


情報収集能力も検証能力も持たない話題で「バカにしている」などと発言しても、客観的には滑稽ではないだろうか。
「主観」という注釈は主張を弱める効果はあるだろうが、発言の責任を取らなくていい根拠にはならない。好き嫌いを超えた発言、たとえば懲戒請求の正当性を訴えたりした場合に「主観」を釈明に持ち出せば、相応の検討をおこたった傍証にすらなる。
専門知識のない私達が、もし誰かを批判する場合に相応の努力をしなければならないのは当然の話だ*6。そして専門家や報道機関が誤った情報を流した場合、より強く批判されるのが道理というものではないだろうか。
メディアリテラシーを持たざるをえない現代の視聴者はバカではない、などというわけがない。視聴者は自他の知識に限界がある、つまり一定の「バカ」であることを自覚し情報に接することこそがメディアリテラシーの第一歩なのだ。
無知を自覚することは恥ではない。


ところで……

( ´Д`)「何や、それはそれで牽強付会っぽいな。一応、傷害致死やのーて、傷害致傷やっちゅーて強弁しとるだけなワケやし」
 だから、明らかな傷害致死を傷害致傷と云い張るその主張は何処から来ているのかって話なワケさ。証拠は全て揃っている。実はそれでも加害者の殺意の意思を否定する事は可能だが、弁護団に知られたらイヤなので、あえてここでは書かない。

弁護側が主張していたのは、傷害致傷ではなく過失致死。そもそも傷害致死ならば最高刑でも死刑にならない*7
さすがに弁護側が障害致傷を主張したなどという報道はなかったと思うのだが、どういった経緯で誤解したのか少し知りたい。ただの書き間違いというには一度ではないし。

*1:成人向けイラスト多数注意。

*2:死刑廃止論以外でも事実誤認が多いが、煩雑になるので最低限にとどめておく。まず差し戻しであって自判ではないのだから、弁護活動に何の不当性もない。むしろ弁護士がつかなければ裁判が進行できない。21人いなければ集中審理も行えなかった。そもそも判決を一つの決着と考えれば一審も二審も無期懲役がくだっている。

*3:http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/kiyotaka/colum10-yasuda.htm

*4:ちなみに光市母子殺害事件裁判では、憲法を根拠とした死刑廃止論は弁論に盛り込まれていない。裁判は事実関係を争うべきと考える安田好弘弁護士の方針だ。逆に死刑存知論者である今枝仁弁護士が、死刑違憲論を弁論に盛り込むべきと主張していた。

*5:http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20080501/1209680167

*6:特に、橋下弁護士が扇動した懲戒請求に正当性がないことは、9月時点でもインターネットで情報を探すだけで充分に判った。

*7:よく似た誤解が親類と議論していた時にも出てきた。やはり、かなり広まっている誤解なのだろうか。