法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『わんだふるぷりきゅあ!』第7話 ふたりのフレンドリベラーレ!

 いろはが朝になって起きると、こむぎがいなかった。こっそり家出をしたこむぎは自分だけで何でもできると考えていたが、公園にあつまるペットと主人の光景を見て、さらに悟と出会ったことで泣き出してしまう……


 成田良美シリーズ構成の脚本に、『トロピカル〜ジュ!プリキュア』でシリーズディレクターだった土田豊の演出。作画監督は沼田広と稲上晃の共同で、やや修正は甘いが作画はかわいらしい。
 こむぎがどのように姿を消したか気づいたいろはや、いろはが想像したこむぎの能天気な姿など、やたら変顔が多くて楽しい。シリアスな状況でただギャグを入れるだけなら違和感があるが、いったん無事な姿を先に視聴者へ見せているので安心して笑える。
 物語としては、前々回*1に登場した新アイテムをつかった新技が完成するまでの販促エピソードにとどまる。主人とペットをつなぐリードが失われたことがこむぎの家出につながる構図はあるが、基本的に問題の解消は言葉をつかったコミュニケーションによっておこなわれ、人間と動物のドラマではありえない。あくまで幼い視聴者に向けた教訓だ。悟という潤滑油を用意して販促ノルマを無駄な引っかかりなく消化した良さはあったし、まゆの短い出番も必要最小限で印象づけられたが、それ以上のものはなかった。
 また、ガルガルが暴れる方向性を指示するようなキャラクターも登場したが、動物が擬人化したような姿なので過去シリーズとの差別化はできている。一応、今後に期待したい。

『貞子3D2』

 呪われた配信映像の事件から生きのびた女性教師だが、出産後に亡くなってしまう。そして産まれた少女の育児は女性教師の夫の妹が助けていた。
 やがて呪われた配信映像の事件がふたたび起こるようになり、その近くに女性教師が産んだ娘がいることに父親が気づく……


 鈴木光司の小説をアレンジした2013年の日本映画。英勉監督は続投しているが、あらすじで書いた主役の交代にともなって主演は変更された。

 3Dを売りにしている映画の2作目であり、今回は鑑賞時にスマートフォンのアプリと連動する企画も追加された。


 今作は『リング』シリーズで『シャイニング』をやってみたかったのかな、という感じがある。しかし和製モンスターホラーとして後半は楽しかった前作*1と違って、幻覚のような恐怖がおそってきては目覚めて中断することがくりかえされるため、映画のテンションが寸断されてしまっている。
 ストーリーにしても、あのキャラクターが実は生きていた、を延々とくりかえす展開におどろきあきれる。このシリーズにもう上等なドラマは期待していないが、いくらなんでも安易すぎるだろう。それでいて感動的な家族愛描写にしようとして、ホラーもサスペンスも寸断されて密度がうすい。
 怪しい子供が呪いの動画を蔓延させた犯人ではないと語られるが、それでは真犯人は誰かというとまともに説明されない。なぜ他に貞子の子供が多数いるのか、その経緯はどのようなものか、ホラーなりに納得できる説明描写はほしい。真相を暗示する結末の分割映像も完全にギャグだ。

『貞子3D』

 ある自殺者の配信映像が若者のあいだで話題になっているらしい。それが気がかりな教師の周囲で不審な自殺があいつぐ。やがて自殺事件の謎を追う刑事と協力して、すべての根源へとたどりつくが……


 後に漫画の実写化作品を多く手がける英勉監督による、2013年の日本映画。鈴木光司の『リング』シリーズの一短編を、オリジナル展開を多く足して映画化したという。

 続編を見る前に全長版を視聴。基本的な感想は下記エントリと変わらない。シリーズに期待されていないC級クリーチャーホラーとしては意外と楽しかった。
hokke-ookami.hatenablog.com
 感想で書いていないところをいうと、橋本愛が演じる貞子の美少女ぶりはシリーズのなかでも突出している。登場した少し後に白目部分をVFXで赤くするような即物的な表現が雰囲気を壊していくが。
 他に感想を書いていない部分として、主人公の恋人の友人が唐突に高架下にあらわれて、異常に笑いながら不思議な話をはじめるシークエンスは良かった。勝手に情報がとびこんでくる展開は謎解きとしては安易だが、白昼でありながら不思議な雰囲気があってホラー演出としても悪くない。


 しかし自殺したアーティストが貞子を復活させて全世界を呪おうとする理由が、作品がパクリとしてバッシングされたというバカバカしさはどうかと思った。それで何人も女性を殺して井戸に投げ捨てる儀式をしたわけだが、たとえ呪いが存在しなくても大事件になるはずで、もう少しまともな動機を設定できなかったものか。ちょっとインターネットユーザーをバカにしすぎではないだろうか。
 あと、少女や主人公の恋人が呪いの動画をさがして視聴しようとする動機が全長版を見ても理解できないことも疑問だった。面白半分でさがしているにしては熱心すぎるし、それでいて勝手に再生がはじまった時には驚き恐怖する。呪いの動画を信じているわりに対策していないことが不思議でしかたない。自殺した友人のため呪いの動画を自分もさがそうとする少女も、やはり対策していないので再生がはじまった動画におびえるだけ。
 そもそも、この呪いの動画は貞子の器をさがすために存在していて、勝手に再生がはじまったりするので、わざわざ登場人物がさがさなくても物語は問題なく成立する。たとえば迷惑メールにURLが記載されたりファイルが添付されたりする描写なら、ずっと自然に物語が成立するはずだ。

『相棒 season22』第20話 トレードオフ~AI右京の完全推理

 拡散された杉下右京の配信映像はAIをつかったフェイクだったが、警視庁は本物あつかいして杉下と甲斐を謹慎させる。しかし自由になった杉下は独自に行動をはじめ、ひとつの真相に気づいて武智淑郎官房長官接触。しかし秘密裏に招かれた邸宅で武智は殺害されていた……


 最終回SP後編。前編*1で印象深かった政治学者は再登場せず、政治学者を襲撃した少年の背景も早々に解決する。
 ただ、そこで反権力の政治学者を起用した気骨あるはずのプロデューサーが、実際は権力に加担していたという構図の逆転を杉下が推理したところは良かった。輿水脚本らしいミステリのエッセンスを感じる。
 今回に発生した殺人事件もシンプルだし、現場にいあわせた杉下の推理は根拠薄弱なものの、やはり構図の逆転劇には面白いところがあった。組織のなかで閉塞した状況に追いやられた正反対の人物が協力することになる展開は、一種のダークヒーローであり「相棒」でもある。トリックとしては交換殺人の一種。
 推理の最中にエンドテロップが流れるあたりも、解決編を重視するミステリらしさがある。敵も味方も上も下もAIを活用して罠をかけあって状況が無駄に混沌としてしまった感じはあったし、もっと整理すれば政治を舞台とした本格ミステリとして切れ味が良くなっただろうとも思うが、期待しすぎなければ悪くない回だった。

刑事告訴が受理されたことをつたえる報道が人権を踏みにじっているというなら、刑事告訴を検討する段階で報道するのはどうなの?

 まず、書類送検は検察が捜査をはじめるまでの手続きであり、逮捕と同じように必ずしも有罪であることを意味しない。
 そこで暇空茜こと暇な空白氏が書類送検された報道に対して批判があり、はてなブックマークでもid:whkr氏による下記コメントがはてなスターを集めて、現在で最上位の注目コメントになっている。
[B! マスコミ] 伊藤詩織さんと暇空茜 さんの「書類送検」、いずれも刑事訴訟法242条の「送付」であり、共に「単なる書類手続き」しかし毎日新聞は、伊藤さんの時は「名誉棄損が認められたわけではない」と報道しておきながら、暇空さんの時はパトカーの画像まで載せて事件性を強調。ひどい悪ノリ🤮

whkr 敵対者にも人権があるという大原則を踏みにじってしまっては、人権思想を自分の都合のいいように振り回してるという批判を避けられないだろう。

 書類送検されたという報道がそのまま人権侵害を意味するかどうかは議論がわかれるところだとは思うが、後述のようにその意見も否定はしない。
 ただし、もとのTogetterでは伊藤詩織氏の書類送検と同等視する意見がまとめられていたが、下記エントリで書いたように、名誉棄損で書類送検された共通点の他に多くの違いがあった。
もしも支援団体Colaboへの監査で不正が見つからなくても請求が認容されたことが重視されるべきなら、たとえば不起訴処分になった人物でも書類送検されたことを重視すべきだろうね - 法華狼の日記

今回とちがって、送検を確定する情報は告訴をおこなった山口敬之氏によって発信されていた。

毎日記事は前後して、先に伊藤氏が山口氏に対して民事で勝訴したことも指摘している。性暴力は刑事では不起訴処分であり、民事でも報じた時点で控訴されていたが、名誉棄損は棄却されていた。

暇な空白氏は弁護士の伊藤和子氏を訴えた裁判で負けたばかり。まだ控訴の可能性もあるが、具体的な根拠なくColaboへの批判をくりかえしたことを前提とした判決が出された。

 上記エントリに対して、はてなブックマークid:kihiketufuwabe氏が下記コメントをおこない、whkr氏などがはてなスターをつけて、現在で最も上位の注目コメントになっている。
[B! web] もしも支援団体Colaboへの監査で不正が見つからなくても請求が認容されたことが重視されるべきなら、たとえば不起訴処分になった人物でも書類送検されたことを重視すべきだろうね - 法華狼の日記

kihiketufuwabe 全然違う。書類送検(送付)は被害届があれば刑事手続上必ず行われる手続き。監査請求は疑いがある場合にしか実施されない。ちなみに暇空氏の監査請求に関しては一部認容、不備も多数ありということで十分理由あり

 監査は本来であれば請求の形式が整っていれば必ずおこなわれる。そして暇な空白氏の場合は、一回だけ監査をおこなう理由は認められたが、監査結果として不正は見つからなかったという結論になった。
 一方、書類送検は警察が捜査に着手しなければおこなわれない。監査請求と同じように、刑事告訴はもちろん被害届も必ずしも受理されるとはかぎらない。だからこそ書類送検という報道には告訴が受理されて捜査がつづくという情報としての意味はある。
 そもそも先述のエントリの結論で、監査請求が認容されたことと書類送検がされたことは、その段階にかぎれば同じように報じるべきではない姿勢も肯定されうるとも明言した。

 なお、すべての監査認容や書類送検について報じる価値がないというなら、それはそれでひとつの立派な姿勢かもしれない。
 しかし現時点での暇な空白氏は、少なくとも伊藤詩織氏とは状況がまったく異なる。そうした周辺情報もあわせて報道されている。

 いずれにしてもkihiketufuwabe氏のコメントは、伊藤詩織氏の書類送検とは状況が異なることの反論にはなっていない。


 そして最近、まったく別件のデマ投稿が疑われている事例で銀行が刑事告訴を検討しているという報道があった。
福岡銀、投稿主の刑事告訴を検討 「取り付け騒ぎ」デマ投稿めぐり [福岡県]:朝日新聞デジタル

福岡銀行の五島久頭取は5日の記者会見で、X(旧ツイッター)に「取り付け騒ぎが起こる」などと投稿されたことに対し、投稿主らを刑事告訴することを検討していると明らかにした。福岡県警や弁護士に相談しているという。

 Twitterのデマ投稿という話題なので暇な空白氏を連想しながらはてなブックマークを見ると、whkr氏が下記のコメントをおこなっていることに気づいた。
[B! デマ] 福岡銀、投稿主の刑事告訴を検討 「取り付け騒ぎ」デマ投稿めぐり:朝日新聞デジタル

whkr この際、リツイート機能も見直した方がいいと思う。2クリックで加害者になれるのは恐ろしすぎる。

 たぶん今件は刑事告訴が受理される事例だろうとは思うが、まだ検討にすぎない段階であり、もちろん書類送検などされていない。それなのに敵対者にも人権があるという大原則は気にならないのだろうか。
 いや、おそらくwhkr氏に人権思想を自分の都合のいいようにふりまわす意図はない。被害届があれば必ず書類送検されるかのような誤った主張にはてなスターを押したくらい、刑事事件の手続きについて理解できていないのだから。
 人権という原則を守るためには、それを都合よくふりまわさないよう気をつける以前に、まず人権という原則が存在することを認識できなければならない。