法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ルパン三世 グッバイ・パートナー』

ルパンを次元が裏切った。どうやら、かつての女性の娘をめぐって何者かに脅されているらしい。
その娘の演奏家としての腕前は、音楽家ショパンをモチーフにした人工知能の鍵になっていて……


1月25日に金曜ロードショーで放映された2時間SP。監督は『お宝返却大作戦!!』の川越淳がつとめ、『アクエリオンEVOL』等の丸藤広貴がキャラクターデザインと総作画監督としてシリーズ初参加。
「ルパン三世」新作「グッバイ・パートナー」放送決定!テーマは“次元の裏切り” - コミックナタリー

25日に放送される第26作「ルパン三世 グッバイ・パートナー」は、完全オリジナルとしては約6年ぶりとなるテレビスペシャル作品。脚本は秦建日子が手がけ、“次元の裏切り”をテーマにしたエピソードが展開される。

TV4期の再編集に新規シーンで黒幕を足した2016年の『イタリアン・ゲーム』*1以来のTVSP。完全新作となると2013年の『princess of the breeze〜隠された空中都市〜』*2以来で、番組宣伝ではそちらの6年ぶりというアピールをしている。
しかし中編映画シリーズも作られ*3、2018年にTV5期も放映されたばかりで、あまり久しぶりという感じはしない。


全体として、良くも悪くもシリーズの最大公約数といったところ。
多少つじつまがあわなくても*4小さなどんでん返しが連続し、少しずつ争点がずれていくところは原作らしい。
目を引く新たなキャラクター解釈こそなかったが、細かなくすぐりは多かった。五ェ門が影武者を古風と評したり、栗田貫一の演じるルパンが物真似の講釈をしたり。
量子コンピュータ人工知能から世界征服へ発展する展開も、まったく新鮮味はなかったが、それゆえ過剰な説明をさけられたのだろう。AIが自分の肉体として作ったらしいアンドロイドの姿を見せないまま終わらせたりと、語りすぎないところに妙味がある。
次元大介の声は年齢的にぎりぎりだったが、今作はテンポが少しゆるめだったので、まだ重厚な演技として成立していた。かつて出会った女性の娘へ、いっさい恋愛感情を見せないのも良かった。


キャラクターデザインは線や影が少なめの現代的なシンプルさで、TV2期をさらに柔らかくした感じ。
全体が絵は整っていて、過去のTVSPのように極端に落ちる場面がないので見ていられる。メカデザインはディテールが細かく動きも激しく、やや古い作画スタイルだが見せ場としては充分。
たぶん制作体制が良かったのだろう、長編なのに監督がひとりでコンテを描いて、原画にも参加。作画監督は複数いるが、近年のTVアニメとしては尺に比べて少ないぐらいだ。作画監督の多くは原画にもクレジットされ、第一原画まではごく少数の精鋭で作画をすませられたようだ。
演奏シーンの3DCGは露骨だが許容はできる。クライマックスの演奏でカメラが回りこみしたりするので、そこで使う3DCGと質感をあわせる効果もあった。

*1:『ルパン三世 イタリアン・ゲーム』 - 法華狼の日記

*2:『ルパン三世 princess of the breeze〜隠された空中都市〜』 - 法華狼の日記

*3:『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』 - 法華狼の日記

*4:ただ、ルパンの仲間と思われて収監された銭形がルパンを捕まえて帰ってきたとき、銭形は逮捕されているはずというツッコミは上司がしたのに、ルパンも逮捕されているはずとツッコミされなかったのは首をかしげた。そこからルパンの脱獄が発覚して銭形の嘘がばれるという展開につながるので、なおさらルパンが逮捕されているという認識を上司が持っていたのかどうか不明瞭に。

『オバケのQ太郎』の「国際オバケ連合」が封印された理由は「黒いオバケが出てる、それだけ」ではない

 まず、『ちびくろサンボ』が一時期に封印された理由は「黒人を黒く描いたこと」ではない、と指摘するツイートがあった。

 復刊を訴える書籍は当時に読んだが、たしかに否定も肯定もさまざまな理由が語られていた。

『ちびくろサンボ』絶版を考える

『ちびくろサンボ』絶版を考える

 黒人のカリカチュアとして主に批判されていたのは、口の大きさや唇の厚さなど。「サンボ」という言葉が、書かれた時点とは異なる文脈をもった問題なども論じられていた。
 それとは別に、『ちびくろサンボ』という作品そのものが著者の表現とは異なるかたちで出版流通し、それが低評価をまねいたという指摘もある。


 対する反論として、「黒人を黒く描いたこと」そのものが抗議されて表現が封印された事例をあげようとするツイートがあった。

 生まれる前のことと書いているので、おそらく伝聞を記憶違いしているだけだろうが、リプライツリーには同意があるだけで反論がない。


 単純な話として、「国際オバケ連合」では多様な人種になぞらえて多数のオバケが登場しており、当時の商品には「黒いオバケ」も複数いる。
「国際オバケ連合」復活! - 藤子不二雄ファンはここにいる

 批判の対象となったのは、左下にいる「ウラネシヤ代表のボンガ」。暑い国から来たボンガは、寒い国から来たエスキモーのオバケのアマンガと対立する。
 そこでアマンガがQ太郎に対して、ボンガは「バケ食いオバケ」であり「人間でいえば人食い人種」だとふきこみ、昔のことだとボンガが反論する。ここまでは劇中人物が誤った偏見を語った描写ではあるが、ボンガが今もオバケを食いかねない描写もギャグとして出てくる。
 この表現が封印されるべきかは別問題として、「黒いオバケが出てる、それだけ」にとどまる描写でないことは明らかだ。


 また、わずか家族3人の団体による抗議は、圧力としては弱い。むしろその抗議もまた表現の自由のひとつと考えていいだろう。
 その抗議に妥当性がないのに作品が封印されたのであれば*1、まず批判されるべきは過剰に委縮した出版社ではないだろうか。


 ちなみに藤子・F・不二雄は作品の封印で委縮するどころか、カニバリズムをモチーフとして選びつつけ、異なるベクトルで傑作の短編2作品を遺している。

藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 (1)

藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 (1)

藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 (4)

藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 (4)

*1:旧『オバケのQ太郎』の場合は、藤子不二雄がコンビとして実際に共作していただけでなく、トキワ荘の漫画家たちによる事実上の合作であったため、著作権などの混乱が作品全体の封印された理由と考えられている。旧作は「国際オバケ連合」に限らず復刊されなかったが、コンビ解消後の藤子・F・不二雄単独作品は封印はされなかった。

比較対象は「戦後最長の好景気」なのか「失われた20年」なのか

 政府の見通しにもとづき、戦後最長の景気回復の可能性をNHKが報じた*1。さまざまな統計の不正が明らかになっていることへの言及はない。
景気回復「戦後最長」の可能性高まる | NHKニュース

政府が今月も景気回復が続いているという見解を示したことで、平成24年12月から始まった今の景気回復は6年2か月に達し、平成14年2月から平成20年2月まで続いた景気回復を抜いて戦後最長となった可能性が高まりました。

 統計の信頼性とは別個に興味深いのが、長さという同基準の景気回復として比較対象になっているのが、「平成14年2月から平成20年2月まで」であること。
 その時期は「いざなみ景気」とも呼ばれて、経済成長が停滞した時期「失われた20年」にふくまれる。
失われた二十年(ウシナワレタニジュウネン)とは - コトバンク

1990年代はバブル経済の崩壊で生じた不良債権の処理を先延ばししたことなど、2000年代はデフレ経済への効果的な対策がとられなかったことなどがあげられることが多い。この間、2000年代初頭のITバブル、2002年から6年ほど続いた「いざなみ景気」を経験しながらも、2008年のリーマン・ショックによる世界不況で、日本経済はふたたびマイナス成長に陥った。

 この「失われた20年」から脱することが第2次安倍政権を経済政策「アベノミクス」が支持される理由だとばかり思っていた。
 しかし政府の見解にもとづく報道でも、「いざなみ景気」と同じ次元で評価されている現状がある。


 同じ時期なのに、期待させる時期には批判するべき対象となり、結果が出た時期には同レベルだから良いとなる。
 いったい何のために比較していたのだろう。
 せめて最初から「アベノミクス」は「いざなみ景気」と同レベルの良さだと喧伝されていれば、誰も期待しすぎることはなかったろうに……

*1:たとえば朝日新聞も政府見解を有料記事でつたえているが、無料の範囲でも「過去の好景気に比べると低成長で、豊かさの実感は薄い」と指摘されているし、会員向けの記述では「不正調査を受け、景気の判断に使う指数などを修正したが、月例経済報告や、それに基づく見解への影響はなかったとしている」と間接的に言及し、いざなみ景気以下という数字も指摘している。景気拡大、戦後最長の可能性 「いざなみ越え」政府見解:朝日新聞デジタル

『相棒 Season17』第13話 10億分の1

ビルから転落死した女性が、冠城の名刺を持っていた。何かを悩んでいる女性を直前に見かけて、相談に乗るといってわたしたのだという。
その女性はネットカフェで寝泊まりし、フリマアプリを使ったインターネットごしの転売でしのいでいた。そこにヤクザのかかわりも見えてくる……


いかにも「メルカリ」を思わせる架空アプリ「ウルカエール」を舞台に、現在のフリマアプリ市場の光と闇を描いていく。ひさしぶりにこのドラマらしい、インターネットの多用な側面を描いて美化も悪魔化もしすぎない良さを感じさせた。
さまざまな人物と安易に出会ってしまうことから、ヤクザの受け渡しの行程に利用されもする。一方、フリマをとおした出会いでも大切なコミュニケーションなのだという考えも肯定する。
苦しい人々の現状によりそった名作「ボーダーライン」を思わせる部分も多いが、登場人物がポジティブだったり、転落死の細部を推理していく展開が細かかったりして、印象はけっこう異なる。
女性たちの嫉妬と愛情をめぐる物語として、必ずしも好みな作りではないが、よくできていると感じられた。


ミステリとしては、手がかりを序盤に露骨に見せたことで、真犯人は最初からあからさまだと思ったが、少しずらした真相なのも良かった。
現場にあったと思われる転売物の正体がけっこう意外かつ納得できるもので、それが死の状況にもかかわっている。

はてなダイアリーの下書きが移行できない

はてなダイアリーの下書きの移行を終えていない人はリダイレクト設定するのは待ったほうが良さそうだ。


先日のエントリで書いた方法で、下書き一覧ページまでは確認できるのだが、実際に個別の下書きを見ようとするとはてなブログへリダイレクトされてしまう。
ダイアリーからブログへの移転、一応は完了 - 法華狼の日記

多数の下書きは自動でインポートされないので、手動で移していく予定。はてなダイアリー全体のトップから、ヘッダにある「管理」から「記事」を確認するページへ移動することで、完全閉鎖までは確認できるらしい。


FAQを見て文章を開くことはできると早とちりしていたが、実行できない一部機能に下書きの確認なども入っていると考えるべきなのだろうか。
【よくある質問】はてなダイアリーからはてなブログへの移行について - はてなブログ ヘルプ

リダイレクトを設定した後でも、はてなダイアリーの管理画面にアクセスできます。はてなダイアリーのトップページなどからヘッダの「管理」をクリックするか、次のURLに直接アクセスしてください。

d.hatena.ne.jp/my/admin

リダイレクト設定後のはてなダイアリーでは「はてなブログにリダイレクトしています。」と表示され、「記事を書く」などの一部機能が実行できませんが、データ管理や有料オプションの変更は可能です。

書きあげて後はアップロードするだけのエントリも多かったので、確認できないのなら無念というしかない。