法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

比較対象は「戦後最長の好景気」なのか「失われた20年」なのか

 政府の見通しにもとづき、戦後最長の景気回復の可能性をNHKが報じた*1。さまざまな統計の不正が明らかになっていることへの言及はない。
景気回復「戦後最長」の可能性高まる | NHKニュース

政府が今月も景気回復が続いているという見解を示したことで、平成24年12月から始まった今の景気回復は6年2か月に達し、平成14年2月から平成20年2月まで続いた景気回復を抜いて戦後最長となった可能性が高まりました。

 統計の信頼性とは別個に興味深いのが、長さという同基準の景気回復として比較対象になっているのが、「平成14年2月から平成20年2月まで」であること。
 その時期は「いざなみ景気」とも呼ばれて、経済成長が停滞した時期「失われた20年」にふくまれる。
失われた二十年(ウシナワレタニジュウネン)とは - コトバンク

1990年代はバブル経済の崩壊で生じた不良債権の処理を先延ばししたことなど、2000年代はデフレ経済への効果的な対策がとられなかったことなどがあげられることが多い。この間、2000年代初頭のITバブル、2002年から6年ほど続いた「いざなみ景気」を経験しながらも、2008年のリーマン・ショックによる世界不況で、日本経済はふたたびマイナス成長に陥った。

 この「失われた20年」から脱することが第2次安倍政権を経済政策「アベノミクス」が支持される理由だとばかり思っていた。
 しかし政府の見解にもとづく報道でも、「いざなみ景気」と同じ次元で評価されている現状がある。


 同じ時期なのに、期待させる時期には批判するべき対象となり、結果が出た時期には同レベルだから良いとなる。
 いったい何のために比較していたのだろう。
 せめて最初から「アベノミクス」は「いざなみ景気」と同レベルの良さだと喧伝されていれば、誰も期待しすぎることはなかったろうに……

*1:たとえば朝日新聞も政府見解を有料記事でつたえているが、無料の範囲でも「過去の好景気に比べると低成長で、豊かさの実感は薄い」と指摘されているし、会員向けの記述では「不正調査を受け、景気の判断に使う指数などを修正したが、月例経済報告や、それに基づく見解への影響はなかったとしている」と間接的に言及し、いざなみ景気以下という数字も指摘している。景気拡大、戦後最長の可能性 「いざなみ越え」政府見解:朝日新聞デジタル