法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ルパン三世 princess of the breeze〜隠された空中都市〜』

王制から共和制へと政治体制が変わったばかりの空中都市国家、シャハルタ。ヘリウムガスを産出することで国際的な存在感を持ち、さらに王制時代の財宝がどこかに隠されているという。
ルパン三世は盗みに入った飛行船で、シャハルタ反体制勢力の空族とはちあわせ。てっきり財宝と思い込んで、バッグに入った赤ん坊をアジトへつれかえってしまう。
すぐに接触してきた空族と共闘することにしたルパン三世は、シャハルタ政府の攻撃を逃れ、空族の少女ユティカと赤ん坊をつれて「シャハルタの魂」を探すことになるが……


画面の雰囲気は、良くも悪くも現代的なTVアニメだ。
シンプルにまとめたキャラクターデザイン、全体の統一感を優先した作画、細密で写実的な背景美術、大胆すぎるほどの3DCG活用、等々……例によって参加スタッフの多さからスケジュールの厳しさはうかがえるが、気の抜けたカットがほとんど存在せず、突出したカットも少なかった。アクションは悪くはないが、特別に良くもない。
加々美高浩キャラクターデザインという情報を見た時に期待したような、凄惨な表情もほとんど描かれない。
『ルパン三世』TVSPのTV放映と無料配信の情報 - 法華狼の日記

予告映像でキャラクターの瞳がやけにキラキラ輝いていると思ったら、加々美高浩デザインだった。『遊☆戯☆王』シリーズで活躍し、華美な絵柄と凄惨な表情で人気をはくしているアニメーターではある。あとはTVSPの作風にあうかどうかだが、これは実際に見てみるまでわからない。

どちらかといえばTVSPの最大公約数的な絵柄で、むしろ線は少ない部類だ。
瞳の大きさや輝きも、実際に見てみれば最初のTVシリーズと大差ないくらいだ。また、敵の洗脳能力を表現するために瞳から光が消える演出が使われており、それをわかりやすくするため瞳を大きめにデザインしたのかもしれない。
峰不二子など、けっこう小さな瞳で、かわりに頭髪を描きこんでいるところが現代的。
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線が少ないかわりに、顔面の骨格を強調するかのように立体感あるデザイン。だから顔をクローズアップするカットが多かったのに、充分に画面がたもっていた。


また、凄惨な表情が描かれないのは、キャラクターの薄い登場人物ばかりだったからでもあろう。
まるで連続TVシリーズを再編集したかのように、多くの登場人物がいれかわりたちかわり舞台から入退場をくりかえす。だからこそ、キャラクターが類型的であったほうが展開を追いやすい。巨悪のコーシャルにいたっては、ただ財力と権力を欲しているだけで、人間としての背景は全く描かれない。
しかし、それが登場人物の言動に一貫性が欠けることを防いで、全体のバランスを生んでいる。薄いキャラクターなりに、物語が進むにつれて少しずつ人格も立ちあがっていく。


そして終盤において、傀儡としてふるまっていたシオンが、隠していた激情をあらわにする。今回において激しい表情を見せる数少ないキャラクターだ。
過去の財宝を求めて右往左往する愚かしさは敵味方に共通していること、王制へ単純に戻るだけでは政治体制の後退であること、社会の変動を直接的に受ける王族にも心があること、そうした物語に欠落していた視点を、最後で一気に補った展開には感心させられたし、爽快感もあった。
しかしそのシオンの怒りすら、ルパン三世によっていなされる。その軽さもまた今作らしいバランスで悪くなかった。


ついでに、序盤で争奪対象になっていた赤ん坊も、隠された身分があるわけではないと肩透かしされる。しかし最後まで役割は与えられている。トリッキーな展開のポイントとなり、その役割が終わったかと思えば小さなギャグにつながり、さらに強敵との戦いでドラマをつくる。
誰もが軽いのに、その時々の展開の核となり、無意味ではない。思えば、原作漫画の『ルパン三世』もそういう軽さを持つ作品だった。今回のTVSPに好感を持てたのは、そのためかもしれない。