法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ルパン三世 イタリアン・ゲーム』

18世紀に活躍した詐欺師「カリオストロ伯爵」の遺産をめぐって、ルパン一味と大富豪女子レベッカが競いあう。
その背後には、他人をチェスの駒のように動かそうとする仮面伯爵が糸をひいていた。


2013年11月の『ルパン三世 princess of the breeze〜隠された空中都市〜』*1以来の、新作TVSP。
金曜ロードシネマクラブ|日本テレビ
しかしイタリアとの合作TVアニメ4期をふくらませた内容で、友永和秀総監督以下のメインスタッフも共通。しかも劇画調のキャラクターデザインどころか映像やエピソードまで流用しており、総集編でこそないが完全新作でもない。TVアニメ4期序盤の拡大SP版とでもいうべきか*2
それでも近年のTVSPと比べれば、映像面では満足できるものだった。もともと流用したTVアニメの質が高いし、完全新作の列車追跡劇や監獄地下決戦もアクションがとぎれず、中だるみする場面がなかった。自動車や背景動画などの手描き作画はコミカルな動きでいて精度が高く、なつかしくも現代的なアニメとして成立していた。
さらに森本晃司コンテ演出による新作OPというサプライズ。立体的な奥行きを重視した本編の演出とは違って、むしろアニメらしい平面的な動きを重視しつつ、音楽と完璧にあわせたリズミカルな動きで目を楽しませてくれた。


物語についても、これに文句をつけるのはハードルを高くしすぎだろう。史実からそれらしい盗難対象を設定し、バラエティあるアクションを散りばめ、魅力的な敵味方を配置して、娯楽活劇として充分な内容だった。
特に良かったのが、重たい動機や葛藤を描かず、仮面伯爵の正体もあっさり流したこと。これまでは出来の良いTVSPでも、ドラマの重さが娯楽の足をひっぱったと感じることが多かった*3。陽性な方向でドライにてっした今作は貴重だ。
あまり人を殺さなかったことも、逆に良かった。どう考えても人が死ぬ場面なのに作者の都合で殺さない展開を子供騙しというのであって、逆に殺す必要がないのに殺すだけで大人のドラマになるわけではない。ルパンの最後の人命救助など、いかにも優越をアピールする洒落っ気があって、ただ見殺しにする展開より工夫されていた。