法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門』

海上カジノをしきる鉄竜会に、五ェ門が用心棒として雇われる。
しかし巨漢の斧使いホークと戦っている間、雇い主の組長が死んでしまい、五ェ門も心を壊して戦えなくなってしまう。
一方、ホークはふりかかる妨害を肉体で蹴散らしながら、海上カジノから金塊をうばったルパンへせまっていた……


TVアニメサイズの前後編をセットにした、1時間に満たない映画。2014年の『LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標』の流れをくみ、2017年に公開された。
映画『LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門』公式サイト
ひたすら力押ししてくるホークに対して、観念に勝機を見いだしていく五ェ門。前者のアクションやカーチェイスで『ルパン三世』に期待される映像の快楽を生み出し、後者の虚実あいまいな表現で『ルパン三世』らしいメタな語り口を表現。
前作がいかにも『ルパン三世』らしいトリッキーな展開で騙しあいを描いたことに対して、今作は肉体を損壊するようなバイオレンスを展開していった。


今作の特色は、人体損壊をどこまでも陰惨に描いていること。劇画調でありつつも漫画キャラクターという印象は残しているキャラクターが、一皮をむいてグロテスクな肉体をさらけだす。
たしかに原作漫画でも人体がズタボロに傷つけられる描写はあるが、洋物イラストのようにデフォルメされた絵柄のため、陰惨な印象は少なかった。肉を削ぎ落として筋肉繊維がむきだしになったり、切り傷が紫に変色していくような表現となると、アニメ全体で探しても珍しい。板野一郎監督のような、流血を景気よく見せるスプラッターとも印象が異なる。
『LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門』小池健監督インタビュー ルパン史上かつてないリアリズムと残酷表現はどう生まれたのか? | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス

キャラクターの生々しい肉体性を表現しようとする日本アニメの流れで考えると、出崎統監督から川尻善昭監督そして小池健監督という影響関係で見るべきだろうか*1
上記インタビューでも、川尻善昭監督の影響と思ったというインタビューイに対して、「そうかもしれないですね。自分で意識しないくらいで、ルパンにそれ(個性)を落とし込んでいけるくらいが一番いいのかな、と思います」と監督が答えている。

*1:途中に浜崎博嗣監督を加えてもいい。