法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

もしも他の支援団体には会計ミスが存在しないならColaboだけが問題視されることも理解できるが、現実はそうではない

 はてな匿名ダイアリーにおいてColaboの問題が是正すべきであるかのように主張され、注目をあつめていた。どれも過去に言及したおぼえがある論点ばかりで、特に新味はないが。
Colaboに問題はなかったと言っている人たち、無知な俺に教えてくれ

以下のツイートや記事によると、不正はともかく不適切な処理が行われていたのは都や当事者も認めているようだけど、これは今回の騒ぎがなくとも是正されたという認識で良いの?

 はてなブックマークを見ると、id:kotobuki_84氏による下記コメントがはてなスターをあつめて注目コメントの上位にはいっていた。

kotobuki_84 「どこも似た様なガバガバ会計だからColaboだけ特別にアウトというわけでは無い」的な擁護が盛り上がった時、同業者的なNPOだか団体かが複数出てきて「全然違う。一緒にするな💢」って怒られるという事件があったよね。

 それが小杉沙織氏のことであれば、やがて厳格な監査への不満をもらすようになり、3月には補助金を返金しなければならない会計ミスが見つかったことを知っている。
NPO若者メンタルサポート協会の小杉沙織氏によると、自団体への監査も厳しくなったとのこと - 法華狼の日記

会計を精査しなおすことの負担を愚痴るだけで、若者メンタルサポート協会の会計にはまったくミスがなかったというなら、小杉氏の立場ならColaboのミスを批判することはできるかもしれない。
しかし小杉氏は、音喜多駿氏と西村ひろゆき氏の見当はずれなColabo批判ツイートに同調するリプライのなかで、なぜか自団体の「杜撰」さを説明していた。

 さらに7月になってカンパの使途で不信感をもたれるようになり、かつての同調者からも批判されるようになった。他の支援団体を批判する予定の書籍は出版中止になった。
カンパの使途をめぐって暇な空白氏が小杉沙織氏を批判しているが、余剰金の流用を最初から明らかにしていたことをどう評価するべきか - 法華狼の日記

 支援団体Colaboへの公金支出について、東京都の監査では不正も返金も認められなかった。
 暇空茜こと暇な空白氏*1は監査請求者として不服をとなえ、カンパをあつめて住民訴訟をおこなっているが、同じようにカンパをあつめていた小杉氏を批判しはじめた。

 Colaboと方針がことなる支援団体は複数あるが、会計についての批判は他に記憶がない。2022年9月に問題視されながら現在は言及されることが少ない無料ピル事業は、意見が対立する団体も参加していた。
仁藤夢乃氏の支援団体Colaboの検証をしたいのであれば、無料ピル事業についても一般的な支援事業との比較は必要 - 法華狼の日記
 逆に、NPOの経験者にして研究者である小嶋氏が、もともと支援運動への補助金はあいまいな領域をおりこんだ制度設計になっていると説明した事例もおぼえている。
Colaboが約1300万円の人件費をもちだしていたという情報を見て、人件費を按分していなかったミスの背景を想像する - 法華狼の日記

一般的に、支援団体は事業に必要な助成金をもらえるわけではない。NPOの研究などをおこなっている小嶋新氏が昨年に説明していたように、助成金だけでは不足するように制度設計されている。

その制度設計なら、原理的に団体が公金を横領できなくなるし、赤字になっても事業をおこなう善性が団体に期待できる。支援活動につきものの情報の秘匿などで経費かあいまいな領域をあらそう必要もなくなる。

 以前に別のはてな匿名ダイアリーへ言及したように、同じ事業を委託された3団体も大同小異の会計ミスは見つかっている。
Colaboへの監査請求を支持する動機に「リーガルハラスメント」もあることが、はてな匿名ダイアリーで語るに落ちていた - 法華狼の日記

自主点検で3団体とも会計の「些細な間違い」が見つかったが、良くも悪くもColaboと大きな違いは見られない*7。

*7:https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/jakunenjosei/moderu.files/tenkenkekka.pdf

 Colaboをふくむ全団体が、経費として認められない部分は補助金以上に経費をつかわざるをえない範囲におさまり、返金の必要はないと認められた。いわば横領などの不正をふせぐためだけならば制度に特段の是正をする必要がないことが確認されたわけだ。
 Colabo以外の3団体は制度変更後も東京都の事業をつづけていることからも、会計ミスやその対応が致命的な問題にはならなかったことがうかがえる。


 次に、Colaboが東京都の事業に申請しなかったことについて、このはてな匿名ダイアリーは時系列が混乱している。

今年4月からColaboが当該事業を受託していないことについて、「単に申請していないだけだ」とする意見が散見される

確かに外形上はそのようにも見えるが、Colaboはこのような声明を公表している。

https://colabo-official.net/230320-2/
新宿区役所前での3月22日のバスカフェ開催、また4月以降の継続についての要望書】
東京都には、夜の街の現状や性搾取の構造を理解し、妨害に屈せず、本事業を守っていただきたいと思っています。

つまりColaboとしては昨年度までの事業を継続してほしいと要望していたわけだ。
しかし、都は会計を厳格化し、Colaboが申請できないようなスキームに変更し、Colaboは新事業に申請しなかったというのが事実関係となる。

 はてな匿名ダイアリーの追記を見ると、はてなブックマークid:sslazio0824氏の指摘を受けて、Colaboが個人情報の秘匿を重視していることは認めて、「公募事業でColaboだけ弾くなんてできるわけないでしょ」と返答している。しかしid:grdgs氏やid:cinefuk氏の指摘に対しては「どこに「バスカフェ突撃妨害を誇るかのような」記載があるのか明らかにしてほしい」や「土地が借りられなくなったのではなく事業の実施方法が変わって新たに申請しなかったって書いてるんだが読めないの?」などと返答している。
 はてな匿名ダイアリーが引用しているColaboの声明は2023年3月のものであり、変更された申請方法に対しての主張ではない。迷惑系YOUTUBERなどの妨害に東京都が屈っさないようにという要望だ。
東京都にバスカフェ開催継続に関する要望書を提出しました – 一般社団法人Colabo(コラボ)

私たちはこれまでにも東京都に対して、バスカフェを妨害者から守り、安全に開催できるよう求めてまいりました。しかし、警察にも適切な対応をしてもらえなかったことから、改めて対応をお願いしています。

 この要望をはねのけることが「厳格化」というのであれば、はてな匿名ダイアリーを書いている人物は「煉獄コロアキ」を支持しているということになるだろう。
 一方、申請方法の変更に対して申請をとりやめたというColaboの説明は6月に出されている*1はてな匿名ダイアリーが言及している「単に申請していないだけだ」というコメントはこれを指している。
【ご報告】若年女性支援団体に対する深刻な妨害に対する東京都の対応に関して記者会見を行いました。 – 一般社団法人Colabo(コラボ)

2023 年度から若年女性支援事業は補助金化され、公表された要綱では、東京都が求める場合に少女たちの情報を民間団体が東京都へ開示しなければならないとなっていることなどから、Colabo は申請しませんでした。

若年女性支援事業では、過去の行政の不適切な対応などから公的機関につながることに不安を感じている女性につながることを目的に活動してきましたが、新たな補助金の要綱では、そうした女性たちが安心して支援につながることができないものとなっています。

 以前から何度か言及してきたように、行政に不信感をもつ支援対象者のためには情報を秘匿するしかないし、危険から守るためにも重要な措置になっている。
公用車を私用でつかって移動代を節約も、私用車を公用でつかって移動代に私費を投入も、問題であることに違いはないだろうと問われても、違うのだと答えるしかない - 法華狼の日記

行政や司法は家庭内の問題では中立を選びがちだ。そのため家庭内暴力がおこなわれている家庭へ強制的にもどされる場合もある。情報を漏洩した場合でも責任をとりたがらない。

 はてな匿名ダイアリーの書き手による「都がColaboを切ったというのはデマなのか。」という問いには答えがふたつある。
 迷惑系YOUTUBERなどによる妨害については屈した東京都がColaboを切ったと表現していいかもしれない。個人情報をさしだすようにという要求はColabo側から切ったと表現すべきだろう。
 念のため、個人情報をさしだすことを選択した支援団体が誤っていると主張したいわけではない。それゆえ個人情報をさしだしたくない団体ではなく、支援対象者そのものを東京都が切ったと表現すべきかもしれない。
 どちらにしても、Colaboが東京都の事業を継続しなくなったのは、会計不正や厳格化とは異なる領域であって、ここをColabo側の問題と位置づけることは困難だ。


 最後に、はてな匿名ダイアリーの余談を見ると、行政の不備がどれほど小さくても常に大きく喧伝されてきたかのような陰謀論をとなえていた。

一点でも行政側の不備が明らかになった場合は大きく喧伝され、マスコミや学問の世界でも問題だと取り上げられてきた。案件によってはそのお行儀の悪さすら、主にリベラル系の人たちによって擁護されてきたように思うが、本件との違いはなんだろうか。

 それは本当だろうか。地域によっては住民監査請求にもとづく監査が定期的におこなわれることがあるし、そこで複数の会計ミスが発見されることも当然ある。
若年女性支援ばかり選択的に興味をもたれた「公金の使途」は、やはり生活保護否定のような社会福祉否定にいきついた - 法華狼の日記

たとえば山梨県などは数年おきに住民請求による監査がおこなわれている。
山梨県/住民監査請求
 公金が投入される団体は会計をきびしく見られるべきという考えに対しては、財政的援助団体への監査は定期的におこなわれ、県立大学なども複数のミスを指摘されている。
https://www.pref.yamanashi.jp/kansa-iin/documents/h27zaiensochijoukyou.pdf

 東京都でも財政的援助団体はおこなわれ、もちろん不適切な事例が見つかることがあるし、Colaboなどの支援団体とは違って返金される場合もある。

2022年は12施設に不適切な事例が見つかり、補助金の返還までもとめられている。しかし当然だが、今後に補助金を出さないと結論づけたりはしていない。
https://www.kansa.metro.tokyo.lg.jp/PDF/03zaien/R4zaien/R4zaien_p53.pdf

 はてな匿名ダイアリーを書いた人物は、上記のような事例がColaboより全国的に報道されてきたと思っているのだろうか。むしろColaboこそ、見つかったミスにくらべて報道がおおきいと思えるが、具体的な反論はできるだろうか。
 同じような陰謀論でしめされてきた具体例といえば、刑事裁判で有罪となった桜を見る会*2都知事という立場で返金にいたった舛添要一氏ばかりで*3、Colaboより重くあつかわれて当然という印象しかもてなかった。
 また、新型コロナ禍に対応する補助金は、迅速に給付できることを優先して制度設計されていた。それゆえ会計ミスどころか、現職の鳥取県議が主導した複数県にまたがる不正受給まで見つかっている。
助成金詐欺で元鳥取県議に実刑判決|NHK 愛媛のニュース

松山地方裁判所の高場理恵裁判官は「被告はコロナ禍の中、助成金を迅速に支給するため審査が簡易になったことを悪用し、不正が発覚しても返金すれば検挙されないなどと考え犯行に及んだ」などと指摘しました。そのうえで「詐欺の手法を事業者に教えるなど主要な役割を果たし、手数料名目に利益を得るビジネスにまで発展させようとしていて、利欲目的な動機は悪質だ」などとして、懲役6年の求刑に対して懲役3年6か月の実刑判決を言い渡しました。

 もちろん上記の不正受給は批判的に報道されているが、制度の「厳格化」をもとめるような論調はほとんど見かけない。忘れられがちだが、不正を完全にふせぐよりも大切にすべきことが社会にはあるのだ。
 はてな匿名ダイアリーを書いた人物や同調者は、本当に公金の不正や会計の不備に興味関心をもっているだろうか。

*1:引用時、改行を適宜排した。

*2:総理大臣だった安倍晋三氏が国会答弁で虚偽をくりかえしたことからも、一支援団体の会計ミスよりおおきく報じられて不思議ではない。仁藤夢乃氏や支援団体Colaboに対して「私の経験上の(違う現場の)感覚で公表情報に疑問点がある」というkuzumimizuku氏の「感覚」を過去の出来事で確認してみる - 法華狼の日記

*3:もちろん東京都で住民監査請求が認諾されたという類似点から連想されやすいのだとは思うが、舛添氏が知事をしりぞいたことには複合的な要因もある。公用車を私用でつかって移動代を節約も、私用車を公用でつかって移動代に私費を投入も、問題であることに違いはないだろうと問われても、違うのだと答えるしかない - 法華狼の日記