法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

仁藤夢乃氏の支援団体Colaboの検証をしたいのであれば、無料ピル事業についても一般的な支援事業との比較は必要

hokke-ookami.hatenablog.com
上記エントリに対するはてなブックマークで、よくわからないコメントが最初について、多数のはてなスターを集めていた。
[B!] 仁藤夢乃氏の支援団体Colaboがバスカフェで提供している食品が一食2600円という計算は、さまざまな意味で誤っている - 法華狼の日記

id:nWY2RhxQPXKQloX3z さすがに、健康保険問題と、補助金ザル審査問題は、ノータッチ。

あくまで上記エントリは話題をかぎった「簡単な記録」と断っているし、Colabo関係者でもない私がすべての論点に言及する義務などはない。一般的に、興味関心にしたがって話題を選ぶ自由は個々人にある。
もちろん当事者のColaboにしても、元資料を読むだけで誤りとわかるような「検証」まで同時に即座に反応する義務はさすがにない。ただ、回答に負担がかかるだけの見当はずれな検証であっても、Colaboにかぎらず公益のため説明しておくことが望ましいとは思っている。
しかし「健康保険問題」が、バズフィードで今年5月に報じられ、最近の「検証」で注目*1されている無料ピル事業のことであれば、やはり一般的な支援事業とてらしあわせるべきだろうとしか思えない。


上記コメントの意図を確認するため、はてなブックマークのコメントをさかのぼっていったところ、匿名記事に対する論評で、無料ピル事業が特定組織をとおすものだと考えていることはわかった。
[B! 医療] 【仁藤案件】保険診療のキックバックは許されるのか

特定の団体を経由して特定の医療機関で無料になるというのは、健康保険との兼ね合いが難しい。「誰でも、いつでも、どこでも」が日本の医療の原則。

しかしバズフィードの記事を読めばわかるが、無料ピル事業は医師の宋美玄氏のおこなう支援であって、あくまでColaboは報道時点でただひとつの協力団体だっただけ。
「ピルは高い」「お金がない」…無料だったらちゃんと飲む?支援を始めた産婦人科医が見た女性たちの現実

産婦人科医の宋美玄さんが昨年度から、無料でピルなどを提供する「無料プロジェクト」を始めています。

手応えを感じた宋さんは、一緒に取り組む女性の支援団体や医療機関、資金提供者を募っています。

誰を対象にするか考えて、実際に生活に困っている女性を支援している複数の団体に相談しました。

今のところ、産婦人科医療が必要な女性たちを紹介してくれたのは、家庭に居場所がなくて街を徘徊している若い女性に声をかけて支援している一般社団法人「Colabo」だけです。

これは現実としてColaboと特定のむすびつきがある事業ではない。報道後の今年6月からは、風俗従事者向け支援団体の風テラスも無料ピル事業に協力している。
【6月の活動報告】宋美玄先生と無料ピル提供を開始! 夜の世界で孤立している女性達に必要な支援を|ふ〜サポ150人募集中(風テラス 2022/07/08 投稿) - 継続寄付 READYFOR

 今回、宋先生の「無料プロジェクト」の連携先となることで、性風俗の世界で働く女性にも自分の体を適切にケアする機会が広がればと思います。

みなさまの周りでも情報を拡散していただければ幸いです。

「無料プロジェクト」の詳細

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/free-pill-project-drsong

法律の専門的な知識がある団体が参加したからといって、必ずしも法的な問題がないとは断言できない。しかし公開された断片的な情報をつなぎあわせた「検証」より一般的に信頼はできるだろう。
ちなみに風テラスはホワイトハンズの事業をNPO化したもので、代表の坂爪真吾氏は仁藤氏の支援事業は応援しつつも、性風俗産業に対する見解で対立していることが知られている。


新刊『見えない買春の現場』(ベスト新書)では、冒頭で「私たちは買われた展」を痛烈に批判しております。ただ私個人は仁藤さんファンなので、買われた展の内容&やり方は色々な意味で完全にアウトだと思いますが、それ以外のコラボさんの活動は引き続き応援しておりますので、宜しくお願い致します!


また、宋氏が女性雑誌LEEで連載しているコラムでも、無料ピル事業の報告がある。これも「検証」以前の今年7月に公開されているが、法律のたてつけの問題という説明がすでにある。
産婦人科医・宋美玄さんが「ピル無料プロジェクト(仮)」を始めたワケ【聴く婦人科診察室#53】 | LEE

保険証が使えない立場の女性もいる。虐待やネグレクト、無保険、DVで逃げている等のケースも
そういう立場の女性を可視化し潜在需要があることをアピールし、広まるきっかけになれば。将来的には行政に制度化してもらいたい
法律的に「タダでもらえるよ」はできないので、金銭的に困っている女性を支援している団体から医療が必要な女性を紹介していただく形を取っている
自費診療の場合、その団体に「寄付」という形で、お金は取らない

つまり、もし無料ピル事業の枠組みに現時点で問題があるならば、あくまで参加している団体のひとつにすぎないColaboではなく、無料支援をはじめた宋美玄氏に主体があると考えるべきだろう。
また、仁藤氏を批判したい心情が先にあるのではなく、あくまで法的な理屈を知りたいのであれば、その相談を主軸にしている風テラスに説明をもとめることが有意義ではないだろうか。


現在のColaboに対する「検証」は、Colaboにかぎらない支援事業の全体像をきちんと視野にいれようとしていない。それゆえ評価するための基準が欠けているし、特に隠されているわけでもない説明すら目に入らなくなっている。
念のため、当事者でなければ社会的な事業を論評する権利がないということではないし、興味がうすいなりに素朴な疑問を素朴な疑問として発することを禁じたいわけでもない。
ただせめてColaboに限定せず支援事業そのものに興味をもち、一般的によくある問題もふくめて以前から広く情報を集めていれば、もう少し社会に有益な「検証」ができるのではないだろうか。

*1:はてなブックマークを見ると、記事が公開された今年5月にコメントされているのは最初のひとつだけで、次にid:kuzumimizuku氏が「疑惑の話で言及されてた」とコメントしている以降はすべて今年9月。[B! 医療] ピルを飲みたいけどお金がない 無料プロジェクトを始めた産婦人科医が見た現実