法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

若年女性支援ばかり選択的に興味をもたれた「公金の使途」は、やはり生活保護否定のような社会福祉否定にいきついた

 暇空茜こと暇な空白氏*1が、Colaboに対する行政訴訟の原告意見を全文公開していた。表現の巧拙はさておき、具体的な疑問が食事代や宿泊費だけなところが興味深い。


今日開かれた住民訴訟
原告 僕
被告 東京都知事 Colabo(補助参加) 他
において、陳述された原告意見全文です。

がんばります。
あと、住民訴訟はWBPCの他団体全部についてもやります

 ひとりあたり8000円以上の食事代は誕生日のような特別なイベントにかぎっていることや、16000円の宿泊費が遠方やホテルなどの必要にせまられて出した金額だということは無視されている。
 そもそも返還が不要になったのは助成金以上に経費がかかっているためなのに、「まるで自由に扱えるお金のように公金を扱っている」などと主張しても、投入された公金がすべて支援活動につかわれたことへの不満でしかない。


 はてなブックマークでは以前より暇な空白氏への否定が多くなり、同調者も原告意見は法廷戦術のようにとらえている。そこで珍しく肯定的に評価するid:opnihc氏のコメントが目を引いた。
[B! 暇空茜] 暇空茜 on Twitter: "今日開かれた住民訴訟 原告 僕 被告 東京都知事 Colabo(補助参加) 他 において、陳述された原告意見全文です。 がんばります。 あと、住民訴訟はWBPCの他団体全部についてもやります https://t.co/HH2QFs8jc2"

opnihc colabo弁護団による説明とは真逆で本質を的確に捉え、端的に問題点を指摘してその社会的意義を簡潔に主張している。colabo問題がなにか分かっていない人はまずこれを読むことから始めることをお勧めしたい。

 ツイッターでも、Colaboのような特別な出費は意義があると指摘する「ノザキハコネ@hakoiribox」氏のツイートに対して、批判ツイートが最終的に憲法の理念を否定しているところを見かけた。


家庭環境に恵まれなかった児童に一般的にありふれた行事とみなせるお誕生日会を体験させるのは福祉としても児童に与えられる健康で文化的な最低限度の生活の範疇としても充分認められると思いますよ。


依然としてあなたの理論だと、貧困家庭の子供が習い事に行けないのもテレビ観れないのもYouTube観れないのもスマホ買えないのも「公費で補助する」って話になっちゃうけど? だからな「生保の範囲内で、知人の私費でやれ」と言ってるんだよ。オンナノコカワイソ独善ノイマイチャンバーから出て来いよ。


貧乏人が金持ちと同じ文化を国の金で享受するのが当たり前みたいな考えらしいなぁ

 結局、Colaboを批判する意見の「本質」なるものは生活保護否定などと大差なかったのだ。それゆえ福祉を軽視したい司法や行政を同調させてしまう懸念ももたざるをえないが。


 もうひとつ暇な空白氏の原告意見で興味深いのは、Colaboの会計が「杜撰」という論点は前面に出していないこと。
 東京都へ対する監査請求では、監査の結果として大半の「疑惑」に問題がなかったことが明らかになった。関連して見つかったミスも、あくまで一部で全体に影響をあたえないくらいだった。
 実際の行政訴訟では傍証のようにもちだすかもしれないが、現時点の暇な空白氏は*2、誤記くらいの会計ミスは公金の使途を追求する根拠として弱いと判断したのだろう。


 しかし多数の意見が却下された暇な空白氏を切り捨てるように、一部のミスを「杜撰」と評価して、Colaboが特異的に許されているかのような主張も人気を集めている。
 匿名記事へのはてなブックマークで人気コメントに入っているid:frothmouth氏が一例だ。
[B! 仁藤夢乃] はてなーのColabo叩きの原罪

frothmouth 「会計はちゃんとしましょう」「公示前選挙運動みたいなことはやめましょう」等の批判がメインだと思う/公金事業において杜撰会計でもOKとなってしまうと、不利益を被るのはColabo批判者ではなく、都民や国民では?

[B! Colabo] Colabo事業への再調査結果があまりにもひどい

frothmouth コレが前例になっていいのか、ってのは多くの人が危惧するところだと思う/Colaboどうこうではなく、自民党肝入りの団体に会計不正の疑いがかかった時に、行政が同様の忖度をするかもしれない

 こうした「杜撰」という基準のはっきりしない評価は、時には江口聡氏のような大学教授まで陰謀論へはしらせる原因ともなっている。


某4団体なるものの会計が同じような杜撰さだったら、なにか共通のものがあると考えるのはそんなにはずれた推測ではないのだろうな。ノウハウがいっしょとか、最終的に会計書類書いた人がいっしょとかか。

 これらの主張は、現状のColaboへの批判の多くが、仮定の未来や仮想の比較にたよらなければ成立しないことをあらわしている。
 現実にはColaboを応援する政党に自民党も入っていたし、Colaboへの監査と同時期に自民党で現職総理の岸田文雄氏は宛名空白の領収書という問題を起こしていた。
岸田首相、領収書の不適切処理認める 宛名空白「責任者の確認漏れ」 [自民] [岸田政権]:朝日新聞デジタル

岸田文雄首相は24日朝、昨年の衆院選の選挙運動費用収支報告書に宛名などが空白の領収書が多数添付され公職選挙法違反の疑いがあるとの報道について、「記載の一部について不十分な点があることを確認している」と認め、再発防止を図る考えを明らかにした。


 もちろん会計ミスそのものは問題ではあり、再発もふせぐべきではあろうが、Colaboは「むしろまとも」と評する専門家がいるくらいの小ささだった。
Colaboが約1300万円の人件費をもちだしていたという情報を見て、人件費を按分していなかったミスの背景を想像する - 法華狼の日記

監査結果が出た時、中小企業診断士の竹上将人氏がColaboについては「小規模事業者としてはむしろまとも」と評しつつ、東京都の担当のチェックが甘いとも評していた。

 たしかに東京都は暇な空白氏もいうように監査請求がとおりにくい問題はあるのだが、たとえば山梨県などは数年おきに住民請求による監査がおこなわれている。
山梨県/住民監査請求
 公金が投入される団体は会計をきびしく見られるべきという考えに対しては、財政的援助団体への監査は定期的におこなわれ、県立大学なども複数のミスを指摘されている。
https://www.pref.yamanashi.jp/kansa-iin/documents/h27zaiensochijoukyou.pdf
 実は財政的援助団体監査は他の都道府県、つまり東京都でも定期的におこなうよう決められていて、監査結果ともども公開されている。
財政援助団体等監査

補助金交付団体等に対する財政援助団体等監査は、都が財政的援助を行っている事業が、補助等の目的に沿って適正で有効かつ効率的に執行されているか、当該団体に対する指導監督は適切に行われているかを主眼として実施する監査です。

 たとえば2022年は12施設に不適切な事例が見つかり、補助金の返還までもとめられている。しかし当然だが、今後に補助金を出さないと結論づけたりはしていない。
https://www.kansa.metro.tokyo.lg.jp/PDF/03zaien/R4zaien/R4zaien_p53.pdf
 悪質な不正ではないミスであるかぎり、その再発防止には理解の促進が重要とされているし、事務負担をへらすことが対応策のひとつとして記述されている。

新規開設施設が大幅に増加している(注)こと、新型コロナウイルス感染症への対応で施設の業務が複雑化していることなどにより、今後も実績報告誤りの発生が懸念される。そのため、施設職員の補助金申請事務への理解を促進する説明会等の取組や事務負担を軽減する取組を更に進めることで、誤りを未然に防ぐ必要がある。

 会計に細部まで極端な厳密さを求めれば、むしろ事務負担が増してミスを起こしやすいし、形式的にミスとなりかねない局面も増えるのだ。
 定期的な監査で発見された山梨県や東京都の各団体のミスとくらべて、一般社団法人Colaboに悪質なミスが多いと感じられるだろうか。多いと感じるだけの最低限の比較はできているだろうか。
暇な空白氏による慈善活動攻撃へ、自然と「Jアノン」が合流している - 法華狼の日記

もちろん興味関心によって注目する対象がかたよることも本来は自由だが、判明した範囲を無視しているとしか思えない比較をしているようでは、妥当な評価ができるとも思えない。
どのような理由から興味関心をもつのも自由だとして、その対象の問題を本当に明らかにしたいのならば、周囲にも視野を広げて比較対象にも一定の興味関心をもって注目しなければならない。

*1:はてなアカウントはid:kuuhaku2

*2:もちろん弁護団などが判断に影響をあたえているかもしれない。