法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ひろがるスカイ!プリキュア』第34話 もんもん!ましろと帰ってきたアイツ

 バッタモンダーは古ぼけたアパートでカップラーメンをすすりながら、プリキュアへの恨みをためこんでいた。一方、虹ヶ丘ましろは自作の絵本を幼児に読み聞かせる機会があったが、ふたりの男児がおもしろくないといって出ていったことに心が沈む。バッタモンダーは人間に変身して紋田という名前の美大生になりすまし、虹ヶ丘の相談を聞くふりをして夢をあきらめさせようとするが……


 成田良美脚本に土田豊演出で、ここ最近の虹ヶ丘の迷いを描いてきたドラマのひとまずの終着点を描いた。
 しかし独立したエピソードとして見ると、偽物がハッタリやかんちがいで本物になっていくストーリー。もともと好きな物語類型だし、細部もていねいに作られていたので、おおいに楽しむことができた。
 まず敵幹部バッタモンダーがプリキュアへの敵意をのこしつつ組織の居場所がないという不安定な立場が、たったひとりでプリキュアの心を傷つけにいく説得力を生んでいる。敵組織の目的ははっきりしないのに敵幹部の個人的な価値観ははっきりしている今作だからこそ、個人の才覚を面白半分で活用する敵が自然になる。
 インターネットでひろった絵を自作と称して虹ヶ丘に信用させる詐欺にはじまり、騙す手法がけっこうしっかりしているところも感心した。その場しのぎのバッタモンダーの台詞が、虹ヶ丘が信じても不思議ではないクオリティに達している。ソラ・ハレワタールたちが乱入して正体がばれるかと思いきや騙されたままで、逆に正体がばれたと思いこんだバッタモンダーの醜態で楽しませてくれる。


 アバンタイトルの生活感あるバッタモンダーの絵作りもいいし、虹ヶ丘の絵本に興味をもたない子供たちもいるというドラマの根幹も絵本の適度に稚拙な絵でリアリティがある。
 くわえて、バッタモンダーの主観で見たプリキュアの間抜け面は画材や画風を変えていることが楽しい。その画風が異なるキャラクターと同じ画面に同居して、ツッコミを入れるバッタモンダーの違和感ある情景もおどろく。このシリーズでこのような素材を撮影であわせる前例はあまり記憶にない。