法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『世界まる見え!テレビ特捜部』ハラハラ!ドキドキが止まらない!あっちもギリギリ こっちもギリギリ2HSP

 ひさしぶりの放映は2時間SP。明確なテーマのつながりはないものの、切迫感のあるドキュメンタリをバラエティたっぷりにダイジェストで見られた。


「カナダ空港税関」は恒例番組。空港税関では特に問題はおきない。密輸の前科がある男が奇妙な仕事をしようとしていた事例など、むしろ男は詐欺にあった被害者と指摘され、入国そのものは許されたりする。
 港で漁をするため越境しようとした夫妻の漁船からマリファナが見つかるが、妻にもってこないようにいわれていたのに怒られるという方向で夫が嘆き、マリファナ自体は基準量以下だったので没収だけで終わる。鷹揚な世界だ。スタジオで指摘されたように、老人といえども女性の下着などを検査する時は女性職員がおこなうようにするべきだとは思ったが。


「フランス エリート消防隊」は、特殊救助隊グランプの活躍を紹介。同じ日本テレビ系列で放送されるTVアニメ『め組の大吾 救国のオレンジ』の宣伝かもしれないと思った。
 しかしタイトルからして救出対象が国家という枠組みなことに首をかしげた作品と違って、グランプは逃走して駅舎の屋根の骨組みにのぼった不法入国者や、少数民族らしい労働者を過酷な状況で傷つきながら救っていく。プロパガンダだとしても、そのような姿を選ぶこと自体に素直に感動した。


「リラックスアニマルズ」は、動物そっくりに擬態したロボットにカメラを内蔵して、接近して野生動物を撮影したドキュメンタリ。
 ギリギリの意味が違うが、ロボットのリアルな外観や動きに、広角レンズで大写しにされた野生動物の姿も珍しい。
 猿型のロボットが猿の仲間には死んだと思われたような情景など、観察に徹するはずのロボットが影響をあたえた結果もまた楽しい。


「極限に生きる人々」は、寒冷地で生きる人々を紹介。ネパールのムスタンの遊牧民が急斜面をヤクの群れとともに移動したり、カナダのカンギクスジュアクの現地人が干潮を利用してムール貝を採取したり。
 特に、3月は海面に分厚い氷がはったまま海水が15mさがることで氷の洞窟ができて、45分間だけ氷の下で採取をおこなえるカンギクスジュアクの情景は神秘的。
 スタジオで北野武らはシジミ採りのような道具で一気に貝をあつめればいいと主張していたが、ムール貝は岩にはりついているので番組が見せたように手をつかわないと採取が難しいはず。


「交渉人 台北人質事件」は、1997年に台湾で発生した外交官人質事件を紹介。世界規模の大事件だが記憶になかった。
 番組では指摘がなかったがアパルトヘイト撤廃直後の南アフリカからの駐在武官の邸宅に、半年前に女子高生誘拐殺人をおこなった犯人が入りこむ。共犯のふたりはすでに自殺していたが、残った犯人は逃亡を助けた妻たちの無罪をうったえて、そのためCNNのような世界的メディアや警察にみずから連絡をする。
 当時の台湾では手柄をあげた警官に報奨金が出るため、周囲をとりかこんだ警官が勝手に発砲。銃撃戦に発展したりする。警察署長は身分を明かさずに犯人と電話をして交渉をするが、二度目の電話からはメディアが犯人と電話をしているため通話ができなくなる。重大事件なのに警察側の意思統一もできていない。
 特殊部隊は邸宅に侵入することに成功するが暗闇で物音をたててしまい、やはり銃撃戦に発展。それでも警察署長が交渉のため単身でのりこんだりして、少しずつ人質を解放することに成功。犯人が要求した弁護士も犯人が死刑になることを率直に指摘したことで逆に信頼をえて、家族の弁護をまかされる。
 銃撃戦で人質が傷ついたりはしたが、かろうじて人命はうばわれず、事件は収束。そして妻が求刑よりも減刑された一ヶ月後、犯人の死刑が執行された……


泥火山で村を失った村人の戦い」は、インドネシアで2006年に発生した地下泥噴出事件のドキュメンタリ。十数mの深さで複数の村を飲みこみ、2030年まで噴出がつづくと予想されている。
 高い堤防を築いて泥をせきとめたが、あふれる泥が多すぎて川に流すことに。さらに堤防が決壊して新たに村が沈んでいく。村人たちは、泥でうまった故郷を観光名所として葛藤しながらガイドしたり、きれいな石を見つけて土産物にして稼いだりする。
 天然ガス採掘場から噴出したという情報から予想されたように、この地下泥噴出は人災。採掘をしていたラピンド社のアブリザル・バクリは地震が原因と主張して、裁判所も追認したが、地質学者などが調査してラピンド社が原因と結論づけた。
 それでも土地の権利書をもたないと賠償されなかったり、賠償額もきわめて低かったり。2014年の大統領選挙でラピンド社に補償させることを公約にしたウィドドが当選して、以前よりも手厚い補償がおこなわれたが、泥の噴出は今もつづいている。
 ドキュメンタリでは補償金をつかって弁護士になる夢を語っていた少女は、スタジオの続報によると見事に法学部を卒業して、夢に向かっているという。しかしスタジオのゲストタレントが、日本で同じ問題が起きることを仮定として語っていたことは疑問。東日本大震災による原発事故汚染がつづいていることを忘れたのだろうか。