法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』答え一発!みこみ予ほう機/自動買いとり機

 今回は前後とも原作があり、2005年リニューアル以降で初アニメ化。どちらも伊藤公志が脚本をつとめ、こづかい不足というテーマも共通しているが意図的だろうか。


「答え一発!みこみ予ほう機」は、のび太がこづかいの値上げを母親にせまろうとするが、秘密道具によると見込みがないという。それでも値上げしてもらいたいのび太は無視して突撃するが……
 単行本未収録だった原作を氏家友和コンテ演出で映像化。ピエロ人形じみた秘密道具デザインが、原作どおりなのに原作らしさが薄い。
 のび太しずちゃんとの結婚を全否定されて悲嘆するシリアスな展開で涙が水たまりになるデフォルメに首をかしげたら、ドラえもんの説教にあわせて鏡のように青空が映る描写に。しかしリアリティの不協和音を感じざるをえず、あまり効果的な演出とは思えなかった。


「自動買いとり機」は、のび太が暑いなかのおつかいをしている時、他人がおいしそうにジュースを飲むのを見て、思わず自動販売機で購入してしまう。われに返って急いで帰ったのび太だが……
 中期原作を腰繁男コンテ演出で映像化。オチの、のび太と父がそれぞれ思い浮かべたことが漫画の吹き出しのように頭上に浮かぶ描写は、アニメという表現媒体の魅力をそこなっていて好きではない。
 初読では予想できなかったが、かなり現代に通用するストーリーと思えることが面白い。秘密道具が査定して即座に現金化するという違いはあるが、今回のストーリーはフリマアプリで限りなく現実化している。冒頭の導入も、温暖化がすすんで残暑が厳しい近年、のび太の行為に説得力を感じざるをえない。社会問題の反映なので歓迎はできないが。
 しかし秘密道具に入れたものを買い戻すには十倍の値段が必要という設定は、書籍の場合は新品を買いなおせば安くすむだろうという疑問をおぼえた。ただの書籍ではなくサイン本にするとか、解きかけの問題集やクイズ本にアレンジしたほうが買い戻さなければならなくなる必然性が生まれたと思う。
 なお、原作のヌード雑誌は今回は映像化されず、ゴルフウェアの星野スミレをフィーチャーした雑誌にアレンジ。せっかくなら星野スミレファンに注目されてプレミア化したのだろうと解釈するアレンジを足しても良かったかもしれない。
 あと、大ピンチからCM入りした直後が絵本『大ピンチずかん』のCMという、その奇遇がおもしろかった。