法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』海坊主がつれた!/デンデンハウスは気楽だな

 今回は前後とも2005年リニューアル以降にアニメ化済みの原作で、どちらも原画に大塚正実。


「海坊主がつれた!」は、スネ夫に釣果を自慢されたのび太が帰宅すると、父親も友人に釣果の魚拓を見せられていた。そして父親と友人が勝負をすることになり、のび太たちは秘密道具で応援する……
 2010年のアニメ化では三宅綱太郎コンテ演出だったが、今回の絵コンテは善聡一郎。どちらも絵作りがいい。
 物語は構造レベルでアレンジがくわえられている。まず冒頭にスネ夫を出してのび太にも対抗心をいだかせて、中盤の再登場では錆びた落石注意の看板を海坊主伝説と称して結末の伏線にする。巨大ガニは外国の特撮映画『SF巨大生物の島』を思い出した。
 鼻からスパゲッティならぬ鼻からうどんを食べるという罰ゲームもアニメオリジナル。しかし最後の大物を協力して釣ろうとする場面の台詞で、ただの嫌味なキャラクターではなくライバル的な悪友というニュアンスが強まった。もっとも原作どおりのオチでドラマ性は投げっぱなしになって終わるわけだが……


「デンデンハウスは気楽だな」は、答案用紙が見つからないのび太に対して母親が捨てたと疑う。怒ったのび太は家出しようとして、移動できるシェルターのような秘密道具を出してもらう……
 リニューアルした2005年に映像化した初期短編をリメイク。かなり原作に忠実で、良くも悪くも意外性にとぼしい。通行人の白い目を追加して、それも気にしないのび太の強情ぶりを表現したのは良かったが。
 他に細かいところで、叱責の大声は聞こえないのに話しかける言葉は聞こえる原作の描写に、どうしてものび太を呼びたい時はメガフォンをつかうというアニメオリジナル描写を足したのは良かった。原作の時点でも秘密道具側で遮断する音声を判断しているのだろうと解釈することはできるが、こういうちょっとしたアレンジがあると秘密道具の実在感が増して良い。
 しかし設定がまだ完全にかたまっていなかった原作どおりにしずちゃんのび太からノートを借りて感謝しているわけだが、はたしてのび太のノートは役に立つのだろうか……たとえば参考書や教科書なら理解できるのだが。