「ぐうたら感謝の日」は、6月に日曜と土曜以外の休みがないことを悲しむのび太に対して、秘密道具で祝日をつくることをドラえもんが提案する。さっそく2日を誰も働いてはいけない祝日にするが……
前期原作「ぐうたらの日」を斉藤光という謎のコンテマンで、劇中の創作祝日を前にしてアニメ化。2006年に安藤敏彦コンテ演出で原作と同タイトルでアニメ化ずみ。
もし労働を法律で禁じていたら……というIFにもとづくナンセンスな社会風刺SFだった原作を、魅力そのままに映像化。社会が決めないと休むことができない日本人の傾向が原作の描かれた時代から変わっていないことも痛感する。そこで商店街のシャッターぶりを強調するアレンジをしていたが、せっかくならコンビニエンスストアが閉まっている描写を足せば、もっと変わった社会の異様さがつたわったかもしれない。
さらに自分でスイッチを切ったドラえもんが白目になったり、のび太がスイッチを入れたドラえもんが目ざめる描写を少し長くしたり、今回はドラえもんのロボットぶりを強調するアレンジが多い。その無機質な人外ぶりが、休日を増やすようのび太を無責任にそそのかす発端から、あわてる群集に口先だけで他人事のように謝る結末まで、今回のドラえもんの態度にあっている。
「しずかちゃんの心の秘密」は、しずちゃんの誕生日プレゼントをのび太が悩んでいた。そこで秘密道具で隠された本音を知ろうとして、さらにライバルが考えているプレゼントも調べるが……
しずちゃんの誕生日の5月説にあわせるように、中期原作「しずちゃんの心の秘密」*1を、小倉宏文監督コンテで映像化。今回と同じサブタイトルで2007年に腰繁男コンテ演出でアニメ化ずみ。
止め絵演出はつかってないが、小倉コンテ回らしくイメージBGは複数回使用。秘密道具を出す時しかつかわなかった時代が印象にのこっているので、あまり『ドラえもん』らしく感じない。とはいえ今回は控えめだったので許容はできた。しずちゃんが激怒する決定的な場面は原作と同じく描写せず、悩みながら去っていくのび太とドラえもんの後ろ姿でしめくくるところは良い。
物語は基本的に原作に忠実で、途中のアンケートで間違ってジャイアンの好物を聞いてしまうアニメオリジナル描写があるくらい。しかしあらためて見ると他人の背後から髪の毛だけ取る秘密道具「カミぬきミラー」の用途限定ぶりがひどい。髪の毛が必要な秘密道具群のオプション的な秘密道具と思うべきか。しかし今回のアニメオリジナルで、落ちこんだのび太が指先をグルグルまわす時、机や床ではなく、秘密道具をつかってドラえもんの後頭部でグルグルまわす描写に笑った。情景のシュールさが楽しいし、ドラえもんに髪の毛がなくそもそもロボットで遺伝情報を獲得する意味がないことで二重に笑える。
*1:原作では「しずちゃん」、アニメでは「しずかちゃん」とのび太の呼びかたが変わるため。私は引用以外はアニメの呼称も原作と同じにしているが、テレビ朝日サイトを見ると原作サブタイトルで厳密にはミスをしている。 www.tv-asahi.co.jp