法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『ドラえもん』ダルマさんころんだ帽/なんでも届く!出前電話

前後とも原作あり。


「ダルマさんころんだ帽」は、ジャイアンスネ夫からとった漫画が教師に没収されてしまい、のび太に回収のとばっちりがまわってしまう。静止すれば感知されなくなる秘密道具をつかうが……
1990年とかなり後期の初出だが、単行本未収録だった短編を2005年以降初アニメ化。清水東が脚本で、杉島邦久がコンテとして二度目の登板。杉島コンテが初作画監督だった渡辺まゆみも二度目。全体的にレイアウトが平面的なのが気になったのと、絵柄の癖が強い。
基本的には原作通りだが、モブ児童が校庭でダルマさんがころんだで遊ぶ風景からアレンジがはじまり、職員室に入ろうとする場面で別の教師でテストすることになったり、全体的に少しずつディテールを足している。
姿を隠す描写は同種エピソードと大同小異で、姿をあらわしてしまうトラブルも意外性はないが、ジャイアンスネ夫のいざこざでさりげなく語られた0点の答案が逆転のポイントになったり、藤子F作品らしい構成の妙は楽しめた。


「なんでも届く!出前電話」は、封筒を買うよう母親からたのまれ、ドラえもんが何でも出前してもらえる秘密道具を出す。のび太はそれを好き勝手につかいはじめるが……
意外と2005年以降で初のアニメ化。氏家友和コンテ演出、藤田優奈作画監督。終盤の作画がのびやかですごくいい。クレジット順からすると三輪修原画かな。
ドラえもんのび太が家の外を見て、さまざまな出前がおこなわれている風景に時代の変化を感じるアニメオリジナル描写がおもしろい。明らかにウーバーイーツをイメージした服装もある。1978年初出の作品にようやく時代が追いついた、といったところか。
さらに原作では風呂に入っていたしずちゃんを、風邪で寝ていた描写に変更。しずちゃんにとって迷惑なのは同じで、かつ色っぽくやつれた感じに作画して、うまく原作のニュアンスをひろっていた。しかし夏のなごりがある時期に寝こむほどの風邪となると、新型コロナを連想せずにいられない。こうなると言及しないことが不自然なくらいだが……
原作のドラえもんは封筒以降はのび太を止めるだけだが、なかなか買えない「どら焼きタワー」なる巨大スイーツを欲望のまま出前してもらうアニメオリジナルも。そこから大型バイクに乗ったワイルドな男が巨大なスイーツを運んできた絵面に笑い、乱暴に運んだのでグチャグチャになったスイーツにウーバーイーツのトラブルを連想し、泣きながら廊下でグチャグチャのどら焼きを食べつづけるドラえもんに大笑いした。
また、原作では星野スミレを呼びつけようとするだけだが、今回のアニメでは橋本環奈ならぬハタモトカンナのサイン入りフィギュアを父がゆずる。インターネットで評判になった奇跡の一枚をモチーフに、藤子F作品になじむデザインでまとめて、かわいい。それが原作通りのジャイアンスネ夫のケンカで破壊され、オチのしっぺ返しを強調。悪くないアレンジだ。

ただ、漫画を出前するのを本屋から編集長にアレンジしたのは、そこから原作通りに漫画家につづきをたのむ展開になるかと思ったら、特に何もなくて首をかしげた。
原作通りにポストをもってこさせる描写も、現在なら郵便物を自宅まで回収にくるサービスがあるので、ポストをもどした後で郵便配達員を呼べば良かったと気づくアレンジを入れるべきだと思う。